《1746年の放免令》
牢の戸口で、赤い軍服の看守が一枚の書状に目を落とす。その前で、腕を吊ったキルト姿の男が妻の肩に顔を埋め、妻は幼い娘を抱いたまま看守に書状を差し出して、まっすぐ前を見る。足もとでは犬が男に飛びつき、床には黄色い花が散っている。
概要
《1746年の放免令》(英: The Order of Release 1746)は、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレーが1852年から1853年にかけて描いた油彩の歴史画である。縦102.9センチ、横73.7センチのキャンバスで、ロンドンのテート・ブリテンが所蔵する。所蔵館によれば、1746年のカロデンの戦いでチャールズ・エドワード・ステュアートの軍が敗れたのち、イングランド側に捕らえられたジャコバイトの兵士が釈放される場面を描く。
画面の読み解き
所蔵館によれば、反乱兵の妻は幼い子を抱き、疲れ果てて傷ついた夫を慰めながら、看守に放免令を手渡している。その表情は読み取りがたく、場面から奇妙に離れているように見え、夫を救うために貞節を犠牲にしたのではないかという含みがある。作品の元の題は「身代金」で、初期の素描では金の入った袋が手渡されていたが、完成作では放免令に置き換えられた。書状の署名は、少年時代のミレーの才能を励ましたサー・ヒルグローヴ・ターナーのものとはっきり読める。ミレーはこの出来事を創作したとみられるが、ウォルター・スコットの小説に想を得た可能性もある。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、ミレーはラファエル前派の「自然への忠実」に従って細部まで描き込み、場面を本物らしくするために手を尽くした。タータンはロバート・マクイアンの『スコットランド高地の氏族』を参照し、男はゴードン家、娘はおそらく母の氏族であるドラモンド家のタータンを身につける。場所を示すのは牢の戸だけで、子の手から落ちたしおれたサクラソウが季節を示し、その幼さも象徴する。父親は職業モデルのウェストール、妻は髪を暗く染めた、のちに画家の妻となるエフィー・ラスキンがモデルを務めた。
来歴
所蔵館によれば、ミレーは本作を弁護士ジョセフ・アーデンに400ポンドで売った。1898年、ヘンリー・テートから同館に寄贈された。所蔵番号はN01657。
意義
所蔵館によれば、1853年のロイヤル・アカデミーに出品されると大変な人気を呼び、観客を立ち止まらせないよう絵の前に警官を置かなければならなかった。『イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ』は、ミレーの小さな一角に、アカデミー会員全員を合わせたよりも多くの賛美者が集まったと伝えた。展示ラベルは、ミレーが女性の心理に強い関心を寄せていたとし、妻のよそよそしいまなざしにその静かな決意を見る。