《司書》
灰青色の幕を背に、本だけで組み立てられた男の胸像が左を向いている。頭には開いた本が髪のようにのり、積み重ねた本が胸と肩をつくる。手前には大きな赤い表紙の本と白い装丁の本が並び、本に挟まれた紙片が垂れている。
概要
《司書》は、イタリアの画家ジュゼッペ・アルチンボルドが、ハプスブルク家の宮廷で描いた油彩の肖像画である。縦98センチ、横71センチのキャンバスで、スウェーデンのスコークロステル城が所蔵する。所蔵館の記録は制作年を1562年とし、1566年の可能性も挙げる。本だけで人物を組み立てた、画家の代表的なカリカチュアの肖像の一つである。
画面の読み解き
所蔵館によれば、描かれているのは左を向いた男の胸像で、全身が本だけで組み立てられ、背景には灰青色の幕が下がる。モデルは、皇帝フェルディナント1世に仕えた学者で収集家のヴォルフガング・ラツィウス(1514〜1565)とみられる。ラツィウスは皇帝の公式の歴史家であり、美術品と珍品の部屋「クンストカンマー」と宮廷図書室の長も務めた。日本語版ウィキペディアによれば、ラツィウス説は1957年に美術史家スヴェン・アルフォンスが唱えたもので、現在ではモデルを不明とする見方もある。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、本作はアルチンボルドがハプスブルク家の宮廷に入って間もないころの初期作で、1560年代初めに、皇帝の側近たちを座興として描いた肖像の連作に属する。同じ連作の《法律家》と《料理人》は現在ストックホルムの国立美術館にあり、構図と様式の点で本作と対応する。
来歴
所蔵館によれば、1648年、スウェーデン軍がプラハを攻略した際に戦利品として持ち去った。旧蔵者は、プラハを攻めた将軍ハンス・クリストフ・フォン・ケーニヒスマルクである。城の解説によれば、同じアルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》が1828年から1845年のあいだに城へ移されると、本作と並べて城の図書室に掛けられた。所蔵番号は11616_SKO。
意義
城の解説によれば、19世紀末に城の案内書を書いた美術史家オーロフ・グランベリは、2点を「質は劣るが文化史上は興味深い作品」とみなし、2点は数十年のあいだ人目につかずに置かれていた。所蔵館の記録によれば、本作は2014年に城で開かれた「ウェルトゥムヌス」展にも出品された。