《シャロットの女》
葦の茂る川べりで、白い衣に長い赤毛の女が小舟に座り、口を開いて前を見つめる。舟には騎士たちを織り出したタペストリーが掛かり、舳先の前には十字架と3本のろうそく。灯っているのは1本だけである。
概要
《シャロットの女》(英: The Lady of Shalott)は、イギリスの画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスが1888年に描いた油彩画である。縦153センチ、横200センチのキャンバスで、ロンドンのテート・ブリテンが所蔵する。所蔵館によれば、詩人アルフレッド・テニスンの詩にもとづいて画家が描いた3点のうちの1点で、詩の物語を主題とする歴史画にあたる。
画面の読み解き
所蔵館によれば、描かれているのは、塔を出たシャロットの女が小舟で川を下り始める、詩の最後の場面である。白い衣に金の飾りをつけ、長い赤毛の女が舟に座り、口を開いて前を見つめる。舟には、女自身とランスロットがほかの騎士たちに囲まれる姿を織り出したタペストリーが掛けられ、女は舟をつなぐ鎖を手にして、いまにも放そうとしている。舳先には「シャロットの女」の名が刻まれ、ランタンが下がる。舟の前には犠牲を表す十字架と3本のろうそくが置かれ、そのうち2本はすでに吹き消されて、女の命がまもなく尽きることを示す。川面には枯れ葉が落ち、低く飛ぶ2羽のツバメが不吉な出来事を告げる。手前の岸には葦が茂り、背後には木々の立つ川べりの景色が広がる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。岸の葦、水面に浮かぶ枯れ葉、タペストリーの模様は細かく描き分けられ、白い衣と赤い髪が、暗い舟と木陰の川面から浮かび上がる。所蔵館によれば、ウォーターハウスは詩の三つの場面を別々の絵にしており、本作はそのうち物語の結末にあたる。女の顔を正面から見る1894年の作と違い、本作の女は見る者から目をそらし、川の先を見つめている。
来歴
所蔵館によれば、テニスンの詩は、伝説のアーサー王と中世の都キャメロットの時代を舞台に、名もない女が受けた呪いを語る。女は塔を出ることを禁じられ、外の世界を鏡に映してしか見ることができない。ある日、鏡に騎士ランスロットの姿を見て振り向くと、鏡は割れ、呪いが成就する。本作はその後、女が塔から川へ降りて舟に乗る場面である。本作は1894年にヘンリー・テートが寄贈した。所蔵番号はN01543で、テート・ブリテンの第8室「民衆のための芸術 1815〜1905年」に展示されている。
意義
所蔵館によれば、悲恋を主題とするこの詩は、ヴィクトリア朝のイギリスの画家たちに好まれた。ウォーターハウスはのちに、鏡に映るランスロットを見る場面(1894年)と、機を織りながら鏡のキャメロットを見つめる場面(1915年)も描いている。所蔵館は、シャロットの女が、愛のためにすべてを犠牲にする破滅の女というヴィクトリア朝の観念を体現する一方、詩が、自然を想像で描くか忠実に写すかという画家たちの問いにも響き合い、女の行動は想像の世界を離れて周りの世界へ向かう画家を象徴したとする。