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《ティタンの堕落》

Titanernes fald
《ティタンの堕落》コルネリス・ファン・ハールレム
Wikimedia Commons / デンマーク国立美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
コルネリス・ファン・ハールレム
制作年
1588–1590年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
239 × 307 cm

光の差す雲の切れ目から、裸の男たちが次々と奈落へ落ちてくる。手前では、もがき、叫び、天を仰ぐ巨人たちが体をねじって折り重なり、見る者のほうへ崩れ落ちてくる。

概要

《ティタンの堕落》は、オランダのハールレムの画家コルネリス・ファン・ハールレムが1588年から1590年に描いた油彩の神話画で、コペンハーゲンのデンマーク国立美術館が所蔵する。館の記録では、カンヴァスに油彩で描かれ、縦239センチ、横307センチ。所蔵番号はKMS1で、館の205室に展示されている。館の解説(エヴァ・デ・ラ・フエンテ・ペーデルセン、2005年)によれば、ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』が語る、ティタン、キュクロプス、巨人たちからなる支配者の神々の一族が、ゼウスの率いるオリュンポスの神々に宇宙の戦いを挑まれる物語を描いている。ティタノマキアと呼ばれるこの激しい戦いは、ティタンの敗北に終わり、ゼウスは彼らを冥界タルタロスに投げ落とした。彼らはそこから地震や火山の噴火を起こすという。

画面の読み解き

館の解説(ヘンリク・ホルムとルイーセ・ヴォルタース、2019年)によれば、画面では、裸の男たちが叫び声をあげながら奈落へ落ちていく。人物たちは渦を巻くように回転しながら、なすすべもなくこちらへ落ちてくる。画家は、あらゆる角度から人体を描く自らの技量を存分に見せている。制作当時、ティタンは自らの衝動を抑えられない者の象徴とみなされていた。人物の性器は蝶やトンボで覆われており、館はこれらが同性愛を示す象徴かもしれないとする。ティタンは冥界へ投げ落とされているが、ここではまるで見る者のほうへ投げ落とされているようで、その描写は激しさと哀れみに満ちているという。館の別の解説(ペーター・ノアゴー・ラーセン、2019年)は、この主題が、人としての配慮をすべて捨てて権力と私利を追い求めることの危うさを、持ち主にも見る者にも思い起こさせるとする。

技法・様式

ペーデルセンの解説によれば、コルネリスは、筋肉の盛り上がった裸体と複雑な姿勢に、自らの芸術の理想のすべてを注ぎ込んだ。裸体の写生が広く行われるようになるのは17世紀の後半だが、ハールレムではカレル・ファン・マンデル(1548〜1606年)がアカデミーを開き、裸体を写生して稽古するだけでなく、芸術の理論も議論した。本作は、そこから生まれたハールレム・マニエリスムの様式の例である。館は、マニエリスムをルネサンスとバロックのあいだの、人工的なものと官能的なものを称える様式と説明し、プラハのルドルフ2世の宮廷などで育まれて北へ広がり、デンマーク王クリスチャン4世のような王侯の心もとらえたとする。館の文献欄によれば、画家の作品総目録を著したピーテル・ファン・ティールは、場面をルシファーの堕落とみる説も出している。

来歴

館の解説(ミケーレ・ゼーハーファー、2024年)によれば、理論家カレル・ファン・マンデルは1604年の『画家の書』で本作について、「裸体のさまざまな姿勢に、どれほど見事な観察が果たされているか、言い尽くせない。このような作品が公の場で見られないのは残念だ」と書き、当時はアムステルダムの個人の収集にあったと伝えている。本作は1621年にクリスチャン4世が購入し、1690年のデンマーク王室の美術品陳列室(クンストカマー)の最初期の目録に、「天から投げ落とされた巨人たちを描いた大きな絵」として記載された。1824年に陳列室が解散すると絵は移され、デンマーク国立美術館の収集として初めて展示されたのは1922年だった。ファン・マンデルの願いがかなうまでに3世紀以上かかったことになると館は述べる。

意義

ゼーハーファーの解説は、本作が館の収集の歴史のなかで重要な位置を占めるとする。日本語版ウィキペディアは、本作を、男性の裸体のさまざまな姿勢を考案して描く技量を示した、ハールレム・マニエリスムの画家の野心作とする。館の記録によれば、1988年の欧州評議会の展覧会「クリスチャン4世とヨーロッパ」などに出品されている。