《アダムとイヴ》
- 作者
- ピーテル・パウル・ルーベンス
- 制作年
- 1628–1629年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 238 × 184.5 cm
- 所蔵
- プラド美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画
楽園の木の下で、裸のイヴが、枝の上の悪魔から禁断の果実を受け取る。木の根に腰かけたアダムは手を伸ばして止めようとする。左の枝には赤いオウムが止まり、イヴの足もとにはキツネがひそむ。
概要
《アダムとイヴ》(西: Adán y Eva)は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1628年から1629年に描いた油彩画である。縦238センチ、横184.5センチのキャンバスで、プラド美術館が所蔵する。2度目のスペイン滞在中に、王室が持っていたティツィアーノの同じ主題の絵を模写したもので、所蔵館は忠実な写しを超えた解釈の研究とみる。
画面の読み解き
所蔵館によれば、場面は『創世記』3章6〜7節に拠る。イヴは知恵の木の実を悪魔の手から受け取り、善悪の知識の木の根に腰かけたアダムがそれを止めようとする。所蔵館の作品紹介は、悪魔を上半身が子どもで下半身が蛇の姿とする。イヴは右手を高く伸ばして果実をつかみ、下ろした左手には葉の茂る枝を持つ。アダムは左手を根について体を支え、右手をイヴの肩のほうへ伸ばしている。ルーベンスはアダムのそばの木に、善と贖いを表すオウムを加え、イヴの足もとで悪と欲望を表すキツネと対比させた。この動物の象徴は、デューラーの同じ主題の版画を思わせるという。原作にオウムはいない。木々の枝には果実が実り、背後には雲の流れる空と、遠くの青い山並みが広がる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館の2013年の発表によれば、イヴの姿と草木は原作の描き方と構図に忠実だが、アダムは描き方も姿勢も異なり、ルーベンスがローマで研究し素描した古代彫刻《ベルヴェデーレのトルソ》から直接想を得た、たくましい筋肉をそなえる。原作のX線写真では、アダムはもっと背筋を伸ばして座っている。作品紹介によれば、色調も原作より強められている。
来歴
所蔵館によれば、画家パチェコは、ルーベンスが2度目のスペイン滞在で王の持つティツィアーノの作品を写したと伝える。1626年の記録では原作はマドリードの王宮アルカサルの夏用の部屋にあり、ルーベンスはそこで見たとみられる。写しはアントウェルペンへ持ち帰られ、画家の死後の売り立てでフェリペ4世が買い取った。1674年のエル・パルド宮の目録に記され、王室の諸宮殿の目録を経て、1834年までに王立美術館の非公開の部屋「サラ・レセルバーダ」に入った。所蔵番号はP001692。2013年に修復され、原作と並べて展示された。
意義
所蔵館によれば、この滞在で描いた作品の中で、ティツィアーノの写しの一群は画家の最も個人的な仕事だった。写すことでヴェネツィアの技法と色、構図への理解を深めたことは、より流れるような作風へ向かう転機となった。同館の美術事典(フェルナンド・チェカ・クレマデス)によれば、ティツィアーノは生涯にわたってルーベンスの最も重要な着想源の一つで、スペイン王室はヨーロッパで最も重要なティツィアーノの収集を持っていた。原作はフェリペ2世がアントニオ・ペレスの収集から得たもので、2点はいまともにプラド美術館にある。