《リンゴの籠》
テーブルの左端で、大きな籠が手前に傾き、赤や緑のリンゴがあふれ出す。中央には暗い緑のワインの瓶が立ち、右奥の皿には細長いビスケットが積み重なる。手前には白い布がうねるように広げられ、その襞のあいだにもリンゴが転がる。
概要
《リンゴの籠》(仏: La Corbeille de pommes)は、フランスの画家ポール・セザンヌが1893年頃に描いた油彩の静物画である。縦65センチ、横80センチ。リンゴを盛った籠、ワインの瓶、ビスケットの皿を載せたテーブルを描く。所蔵館によれば、セザンヌの作品で初めてシカゴ美術館の所蔵となった一点である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、一見すると、ワインの瓶を中心に果物を盛ったテーブルの情景に見える。だがよく見ると、現実のずれが次々に現れる。テーブルの手前の縁は布の左右で高さが食い違い、瓶は傾き、籠からはリンゴがこぼれ落ちる。右奥の皿には、「猫の舌」と呼ばれる細長いビスケットが危うい塔のように積まれ、画面の外へ崩れ落ちる寸前で不思議に止まっている。籠は台の上で手前に傾けて置かれ、青みがかった灰色の壁が背景を占める。手前の白い布は、彫刻のような厚い襞をつくってテーブルの上に広がり、その上にもリンゴが転がる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、画家の「制御された混沌」とも呼ばれる感覚は、筆づかいの違いによっても強められている。布の厚い襞の中の果物は濃い筆触で量感をもって描かれ、テーブルと布の縁のまわりには素描のような筆の跡が残る。セザンヌはめったに作品に署名しなかったので、左下の「P. Cézanne」の署名は、画家がこの絵か、最初の持ち主を重く見ていたことを示すという。
来歴
所蔵館によれば、画商アンブロワーズ・ヴォラールが1895年11月までに手に入れ、同年末にパリのヴォラール画廊で開かれたセザンヌ展に並んだ。その後、ベルリンの画商パウル・カッシーラーを通じてリューベックの収集家マックス・リンデ、パリのベルネーム=ジューヌ画廊、ジョス・エッセル、ポール・ローゼンベールの手を経た。1925年までにシカゴのフレデリック・クレイ・バートレットが買い、1926年に館に寄贈した。所蔵番号は1926.252。現在は第248室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、印象派と呼ばれた画家たちのなかでセザンヌは異色の存在だった。初めは印象派の典型的な主題である風景を描いたが、人目を引く複雑な静物画によって、「死んだ自然」を意味する伝統的な静物画のあり方を変え、今も見る者を戸惑わせ、引きつけている。館は本作をポスト印象派の作品に分類する。