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《深みの水泳》

Swimming
《深みの水泳》トマス・エイキンズ
Wikimedia Commons / エーモン・カーター美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
トマス・エイキンズ
制作年
1885年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
69.5 × 92.4 cm
流派
写実主義

木立に囲まれた水辺に、石積みの突堤が延びる。裸の男たちが突堤に寝そべり、腰かけ、背を向けて立ち、一人は頭から水に飛びこむ。右下では画家自身が、水面に頭を出した飼い犬のほうへ泳いでいく。

概要

《深みの水泳》(英: Swimming)は、アメリカの画家トマス・エイキンズが1885年に描いた油彩画である。縦69.5センチ、横92.4センチのキャンバスで、テキサス州フォートワースのエーモン・カーター美術館が所蔵する。水辺で泳ぐ6人の裸の男を描いた水浴図で、所蔵館によれば、人物は画家自身と教え子たちの肖像である。

画面の読み解き

木々の茂る水辺に、石を積んだ突堤が水面へ突き出す。左端の男は突堤に横たわって片肘をつき、その右では一人が腰を下ろして片腕を上げる。突堤の上には一人が背を向けて立ち、腰に手を当てて水面を見下ろす。右端では一人が頭から水に飛びこみ、手前では赤毛の一人が腰まで水につかり、突堤に手をかけている。所蔵館によれば、右下で泳ぐのがエイキンズ自身で、飼い犬のハリーに向かって泳いでいる。赤茶色の犬は突堤の近くの水面から頭を出している。奥には濃い緑の木立と明るい草地、青空が広がり、人物の肌が木陰の水辺に浮かび上がる。水面には人物や石積みが揺れて映り、飛びこむ男のまわりには小さな水しぶきが立つ。突堤の中ほどの石には「EAKINS 1885」の署名と年記がある。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、ペンシルヴェニア美術アカデミーで教育を率いていたエイキンズは、裸体の研究を教育の中心に据えた。古代ギリシアの彫刻家は生きた人体を直接観察して作ったと考えてそれに倣い、学生どうしが裸でモデルを務めることまで勧めた。本作は、人体の研究に打ちこむ現代の芸術家の共同体という画家の理想を示す、目に見える宣言である。同館の学芸員ドリーン・ボルジャーと保存修復家クレア・M・バリーの1994年の論考によれば、1993年の洗浄で、風景の暗さや人物を包む金色の輝きは何層ものワニスのせいだとわかり、豊かな筆づかいと鮮やかな色がよみがえった。

来歴

同じ論考によれば、アカデミーの教育委員会の委員長だった実業家エドワード・H・コーツの注文で描かれ、1885年の同アカデミーの年次展に出品された。しかしコーツはまもなく本作を画家に返し、より穏当な風俗画と取り替えた。生前の展示はほかに1886年のルイヴィルの1回だけで、画家の死まで手もとにあった。1925年、フォートワースの人々が未亡人スーザンから750ドルで買い、市の公共図書館に掛けられた。1963年11月には、ケネディ大統領夫妻が泊まったホテル・テキサスのスイートにも飾られている。1990年、同館がおよそ5000の財団や企業、個人から1000万ドルを集めて買い取った。所蔵番号は1990.19.1である。

意義

所蔵館によれば、人物が画家と教え子たちの肖像と見分けられたため、本作は大きな論争を呼び、わいせつだという非難を受けた。学生の一部は画家の方法を擁護したが、裸体の研究を強引に押し進める画家の姿を語る者もいて、エイキンズは本作を描いた翌年にアカデミーを辞めさせられた。ボルジャーらによれば、画家自身は1885年に「Swimming(水泳)」と呼び、よく知られた「The Swimming Hole(泳ぎ場)」の題は1917年からで、未亡人の提案とみられる。長く1883年とされた制作年も、薄れた署名を修復家が読み誤って補ったためで、実際の記入は1885年だった。