《スザンナと長老たち》
- 作者
- アルテミジア・ジェンティレスキ
- 制作年
- 1610年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 170 × 121 cm
- 所蔵
- ヴァイセンシュタイン城
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- イタリア・バロック絵画
石の腰掛けに座った裸のスザンナが、顔をそむけて両手を上げ、壁の上から身を乗り出す二人の長老を払いのけようとしている。若い長老は年長の男の耳にささやき、年長の男は口に指を当てている。
概要
《スザンナと長老たち》(伊: Susanna e i vecchioni)は、イタリアの画家アルテミジア・ジェンティレスキが1610年に描いた油彩画である。縦170センチ、横121センチのキャンバスで、ドイツ・ポンマースフェルデンのヴァイセンシュタイン城にあるシェーンボルン伯爵家の収集に属する。ロンドン・ナショナル・ギャラリーによれば、アルテミジアの署名と年記のある作品のうち、最も早いものである。パリのジャックマール=アンドレ美術館は2025年の展覧会の案内で、画家がわずか17歳でこの大きな油彩画を描いたと紹介している。
画面の読み解き
旧約聖書の外典に収められたスザンナの物語による。水浴びをしていた貞淑な人妻スザンナを、隠れていた二人の長老がのぞき見て言い寄り、拒めば姦通の罪を着せると脅した場面である。石の腰掛けに座った裸のスザンナは、白い布を腰に掛けたまま身をよじり、顔をそむけて両手で二人を払いのけようとする。背後の石の壁の上からは、赤い衣と茶色い衣の長老が身を乗り出す。若いほうは年長の男の耳にささやき、年長の男は口に指を当てて声を立てないよう求めているようにみえる。背景は青い空と雲だけで、左下の石の段には画家の名と1610年の年記が記されている。
技法・様式
ジャックマール=アンドレ美術館の案内によれば、アルテミジアはローマで、カラヴァッジョの直接の弟子で友人でもあった父オラツィオに学んだ。カラヴァッジョのように下描きなしで生身のモデルから直接描き、強い明暗の対比(キアロスクーロ)をとらえたという。同館は、アルテミジアがバロック絵画の女性の裸体に新しい力をもたらしたとも述べる。本作でも、ほとんど飾りのない石の建物と空だけを背にして、三人の人物が画面の手前に押し出され、スザンナの白い肌と、長老たちの赤や茶の衣が強い対照をなしている。
来歴
ロンドン・ナショナル・ギャラリーが2020年に公表した貸出作品の記録によれば、本作は1715年までにローマの画家ベネデット・ルーティの収集にあった。同年7月15日、ルーティはマインツ大司教ロタール・フランツ・フォン・シェーンボルンの宮廷顧問官バウアー・フォン・ヘッペンシュタインに宛てた手紙で本作に触れている。1719年までにヴァイセンシュタイン城のシェーンボルン家の収集に入り、以後同家に受け継がれてきた。所蔵番号は191である。
意義
本作は、2020年10月から翌年1月にロンドン・ナショナル・ギャラリーで開かれた展覧会「アルテミジア」に貸し出された。アルテミジアは生涯にこの主題を何度か描き、同館の展覧会資料は、1622年の作(バーリー・ハウス)と1652年の作(ボローニャ国立絵画館)も取り上げている。同館は1622年の作について、アルテミジアがこの物語に女性の視点を与え、驚いて苦しむスザンナの慎みに焦点を当てたと述べている。