《春》
- 作者
- ローレンス・アルマ=タデマ
- 制作年
- 1894年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 178.4 × 80.3 cm
- 所蔵
- J・ポール・ゲティ美術館 (72.PA.3)
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
- 流派
- アカデミック美術
白い大理石の街の階段を、花冠をつけた裸足の女性と子どもたちが、花籠や楽器を手に下りてくる。屋上や窓からは人々が身を乗り出して花を振り、中央のアーチの下の桟敷からも行列を見下ろす。赤いケシや黄色の水仙が画面に散る。
概要
《春》は、オランダ生まれでイギリスで活躍した画家ローレンス・アルマ=タデマが1894年に描いた油彩画である。縦178.4センチ、横80.3センチの縦長のキャンバスで、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館が所蔵する。左中ほどの円柱の下に「L Alma Tadema Op CCCXXVI」の署名があり、画家が付けた作品番号326を示す。
画面の読み解き
所蔵館によれば、花冠をつけ楽器を奏でる裸足の若い女性と子どもたちが、大理石の都を行進している。屋上から身を乗り出す見物人は歓声を上げて手を振り、中央のアーチの下の貴賓席では、より控えめな人々が行列に応える。その前の、青い竿に掲げられ紫の花綱で飾られた金色の標章には、自然と庭と豊穣の神プリアポスに捧げるラテン語の銘がある。画家がどの祭りを描いたかははっきりしないが、古代ローマへの多くの言及は、春の豊穣と実りの祝祭、とりわけ花の女神フローラを讃えるフロラリア祭を思わせる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、真紅のケシや黄色の水仙といった色の点が、見る者の目を画面のすみずみへと導く。アルマ=タデマは熱心な古代の研究者で、古代イタリアの建築と彫刻の写真を大量に集めていた。だが絵がいかに考古学的に正確に見えても、異なる時代と場所の意匠を自由に組み合わせている。左の半ば隠れたアーチには、114〜118年ごろに完成したベネヴェントのトラヤヌス帝の凱旋門の銘があり、その下の円形の浮き彫りは、200年後のローマのコンスタンティヌス帝の凱旋門の河神から借りている。
来歴
所蔵館によれば、ロベルト・フォン・メンデルスゾーンの手を経て、1900年にロンドンの画商アグニューへ、1901年にシカゴの実業家チャールズ・タイソン・ヤーキスへ売られた。1910年のヤーキスの売り立て以後、アメリカの収集家のあいだを渡り、1972年2月28日、ロサンゼルスのサザビーズのメッテルニヒ売り立てで同館が購入した。所蔵番号は72.PA.3。
意義
所蔵館によれば、フロラリア祭に根をもつイギリスの5月祭の伝統は、急速な工業化のなかで春と自然を祝うものとして19世紀に復活した。そうした祝祭と本作の図像は、同時代のイギリス社会を、大英帝国が自らの先達とみなし憧れた古代ローマの帝国と美学に結びつけた。本作は、古代の祭りを主題にした歴史画として、その結びつきを示している。