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《アンティオキアの聖マルガリタ》

Saint Margaret of Antioch
《アンティオキアの聖マルガリタ》フランシスコ・デ・スルバラン
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
フランシスコ・デ・スルバラン
制作年
1630–1634年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
163 × 105 cm
所蔵
ロンドン・ナショナル・ギャラリー (所蔵番号NG1930(2026年10月時点でルーヴル美術館に貸出中))
流派
スペイン・バロック絵画 / スペイン黄金世紀
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暗い背景から、羊飼い娘の装いの若い聖女が浮かび上がる。つば広の麦わら帽子、青い上着と赤いスカート。片手に杖を持ち、祈祷書に指をはさみ、腕には縞模様の鞍袋を掛ける。その背後の暗がりから、竜が牙をむいた頭をのぞかせる。

概要

《アンティオキアの聖マルガリタ》は、スペインの画家フランシスコ・デ・スルバランが1630年から1634年頃に描いた油彩画である。縦163センチ、横105センチのキャンバスで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。所蔵館によれば、マルガリタはアンティオキアの出身とされる4世紀の聖女で、キリスト教に改宗したために異教の神官だった父に勘当され、羊の番をして暮らした。『黄金伝説』によれば、悪魔の化身である竜に呑み込まれたが、無傷で出てきたという。のちに安産の守護聖人となり、竜がそのしるしとなった。

画面の読み解き

所蔵館によれば、聖女は裕福な羊飼い娘の装いで描かれる。襟と袖口の巻いた白いシャツに、青い毛織の上着(サユエロ)と子羊の毛皮の胴着(ペリカ)を重ね、つば広の麦わら帽子をかぶり、縫い目の見える革のサンダルを履く。片手に羊飼いの杖を持ち、もう一方の手の指を祈祷書にはさんで祈りの途中であることを示す。腕には、農民の織り手が作る縞と幾何学文様の色鮮やかな鞍袋(アルフォルハス)が掛かる。足もとでは竜が、輝く聖女の後ろの暗がりにうずくまり、光がそのうろこと目と牙を照らし出す。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、画面はなめらかに入念に仕上げられ、肌の部分では筆の跡がほとんど見えない。スルバランの女性聖人の多くは助手の手を借りて連作として描かれたが、本作は連作の一点ではなく、すべて画家自身の手による。暗い背景から、強い光で人物を浮かび上がらせるテネブリズムの手法がとられている。

来歴

所蔵館によれば、スルバランは1629年からセビーリャに住み、セビーリャとエストレマドゥーラの教会や修道院のために描いたほか、リマ(1647年)やブエノスアイレス(1649年)からの注文など、多くの作品を南アメリカへ送った。本作は女性聖人の連作を数多く手がけた1640年代より前の10年間の作とみられる。1903年に同館が購入し、所蔵番号はNG1930。2026年10月時点では、パリのルーヴル美術館に貸し出されている。

意義

所蔵館によれば、本作は対抗宗教改革の理想を表している。聖女を同時代のスペインの羊飼い娘として身近に描き、衣装や鞍袋の質感を写実的に描き分けることで、信仰を見る者の日常に結びつけた。スペイン・バロック絵画の宗教画の典型を示す作品である。