《ルーベンスとイザベラ・ブラント》
- 作者
- ピーテル・パウル・ルーベンス
- 制作年
- 1609–1610年
- 素材
- オーク材の板に移したキャンバス / 油絵具
- 寸法
- 178 × 136.5 cm
- 所蔵
- アルテ・ピナコテーク
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画
スイカズラの茂みの下で、黒い帽子の若い男が腰かけ、足もとの草に座る妻と右手を重ねる。妻はつばの広い帽子と大きなレースの襟をつけ、穏やかにこちらを見る。二人とも、流行の豪華な衣装に身を包む。
概要
《ルーベンスとイザベラ・ブラント》(独: Rubens und Isabella Brant in der Geißblattlaube)は、ピーテル・パウル・ルーベンスが1609年から1610年頃に描いた油彩画である。縦178センチ、横136.5センチ。ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵する。館の題は「スイカズラの東屋のルーベンスとイザベラ・ブラント」。所蔵館によれば、8年にわたるイタリア滞在から1608年にアントウェルペンへ戻ったルーベンスは、翌1609年にイザベラ・ブラントと結婚しており、本作はその結婚を記念する肖像画とみられる。画家自身と妻を大きな画面に描いた、フランドル・バロック絵画の初期の代表作である。
画面の読み解き
スイカズラの生い茂る東屋の下で、黒い帽子に白いレースの襟をつけたルーベンスが、脚を組んで腰かける。金茶色の上着の上に黒いマントを掛け、左手は剣の柄に置く。右手は、隣で草の上に座るイザベラの右手に重ねられている。イザベラは高い麦わら帽子に大きなレースの襟をつけ、金の刺繍の胸当てと赤紫の絹のスカートをまとい、左手に扇を持つ。二人とも、落ち着いた表情でこちらを見る。背後の茂みには淡い紅色の花が咲き、左の奥には青空と遠い野が開ける。
技法・様式
バイエルン州立絵画コレクションによれば、重ね合わされた二人の手は、古代の手本にならった夫婦の契りのしるしである。題の由来となったスイカズラは、ドイツ語で「長ければ長いほどよい」を意味する俗称で呼ばれ、二人の絆がいつまでも続くことを語っている。流行を追った豪華な衣装は二人の社会的な地位の高さを示し、大きな画面とともに作品の格を高めている。同コレクションは、ルーベンスが自分を働く画家ではなく、知的な人物として示していると述べ、草の上に座るイザベラのくつろいだ姿は「愛の庭」の絵の伝統を思わせるとする。所蔵館によれば、画布に描かれたのち、オーク材の板に移されている。
来歴
所蔵館によれば、本作は1806年にデュッセルドルフの画廊からミュンヘンに移された。所蔵番号334。アルテ・ピナコテークの第7室に展示されている。
意義
イタリアから帰国した1609年、ルーベンスはアルブレヒト大公とイサベル大公妃の宮廷画家となった。同じ年の結婚を記念する本作で、ルーベンスは古代と人文主義への関心を示しながら、自らを教養ある人物として描いた。所蔵館は、画面の構成と古典へのほのめかしに、画家としてのルーベンスの自己理解が表れているとみている。祝いの気分と品位を備えたこの大きな肖像画は、アントウェルペンで活動を始めたばかりのルーベンスの自信を伝える。