《ロムルスとレムス》
- 作者
- ピーテル・パウル・ルーベンス
- 制作年
- 1612年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 213 × 212 cm
- 所蔵
- カピトリーノ美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画
川辺のイチジクの木の下で、横たわった雌狼の乳を双子の赤子が飲み、右から羊飼いが駆けつける。左では川の擬人像の老人と双子の母が見守り、枝からは赤い実をくわえたキツツキが舞い降りる。
概要
《ロムルスとレムス》(伊: Romolo e Remo)は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1612年頃に描いた油彩画である。縦213センチ、横212センチのほぼ正方形のキャンバスで、ローマのカピトリーノ美術館の絵画館が所蔵する。ローマ建国の伝説を描いた神話画で、所蔵館は《ロムルスとレムスの発見》とも呼ぶ。所蔵館によれば、画家はイタリアとスペインでの長い滞在から故郷のアントウェルペンに帰って数年後、35歳のころに本作を描いた。1601〜1602年と1605〜1608年に暮らして働いたローマの歴史への、オマージュだという。
画面の読み解き
所蔵館によれば、描かれているのは、テヴェレ川の岸で雌狼の乳を飲む双子のロムルスとレムスを、羊飼いのファウストゥルスが見つける場面である。右から駆けつけるファウストゥルスは、つば広の帽子に毛皮の襟と赤い袖の服を着て杖を握り、左手を差し出す。中央では雌狼が身を横たえて振り返り、双子の一人は乳に吸いつき、もう一人は両腕を上げて空を仰ぐ。左には、川そのものを擬人化した筋骨たくましい老人と、双子の母レア・シルウィアがいる。老人は草の冠をかぶり、水瓶にもたれる。背景の中央を占めるのは、伝説で名高いイチジクの木「ルミナリス」で、その枝からは赤い実をくわえたキツツキが双子のほうへ舞い降りる。手前の岸には貝殻やカニが散らばる。プルタルコスの『英雄伝』のロムルス伝は、野生のイチジクの木のそばで雌狼が双子に乳を与え、キツツキも餌を運んで見守ったと語り、どちらもマルスの聖なる生き物だったので、双子の父はマルスだという母の言葉が信じられたと記している。
技法・様式
所蔵館によれば、本作を描いたころのルーベンスは、17世紀ヨーロッパの文化を担う中心人物の一人として地歩を固めつつあり、並外れた助手たちの力も借りて、各地の宮廷が求める大作の連作を手がけていた。本作にも、ヴェネツィアの絵画に由来する洗練された色づかいと、古典の美術への深い知識が結びついている。2013年に東京で開かれたルーベンス展の学芸員、廣川暁生は、画家がイタリアで古代とルネサンスの作品を見て回って描き写した素描や絵画が、のちにアントウェルペンで手がける古典的な主題の傑作《ロムルスとレムスの発見》に見事に実を結んだと述べる。
来歴
所蔵館によれば、本作は、1621年から1627年までフランドルに教皇大使として赴いたジョヴァンニ・フランチェスコ・グイディ・ディ・バーニョ枢機卿のもとにあり、のちローマのピオ家に移った。1750年、同家の収集のほかの重要な作品とともにカピトリーノに譲られる。絵画館は1748年から1750年にかけて、サッケッティ家とピオ・ディ・サヴォイア家の収集から、ティツィアーノ、カラヴァッジョ、ルーベンスらの16〜17世紀の絵を買い入れて生まれた。所蔵番号はPC 67で、コンセルヴァトーリ宮2階の絵画館の「聖ペトロニラの間」に掛かる。
意義
所蔵館は、本作を来館者に最も求められ、愛されている作品の一つとする。2013年1月までに、修復家ニコラ・サリーニが、来館者が見学できるよう聖ペトロニラの間に設けた作業場で修復を行った。費用は、同じ2013年に日本でルーベンスの大きな展覧会を開く毎日新聞社が負担した。その「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展では、本作は《ロムルスとレムスの発見》の題で日本で初めて公開され、東京のBunkamuraザ・ミュージアムに3月9日から4月21日まで展示された。