《キリストの復活》
赤い衣をまとい、十字の旗を手にしたキリストが、蓋のずれた石棺の上に浮かぶ。左右には天使が舞い、棺のまわりでは4人の番兵が驚いて倒れ、腕を上げ、身をよじる。
概要
《キリストの復活》は、イタリアの画家ラファエロ・サンティが1499年から1502年に描いたとされる油彩の板絵で、サンパウロ美術館(MASP)が所蔵する。館の記録では、縦56.5センチ、横47センチ、厚さ1.5センチ。所蔵番号はMASP.00017。館の学芸員は、本作を南半球にあるただ一つのラファエロの作品と紹介し、画家が16歳から19歳のころ、もはや他の画家の工房に属さずに描いた最初期の作の一つとしている。
画面の読み解き
館の学芸チームの解説(2015年)によれば、キリストの足が画面の中心を示し、その下には、さまざまな方向へ身ぶりをする4人の番兵がつくる長方形がある。その真ん中にある石棺の半ば開いた蓋が、背景の丘や山とともに量感と奥行きを感じさせる。キリストの左右の天使は、上を指す身ぶりをくり返し、神の存在への信仰をほのめかす。画面の左奥では、3人の女性が道を歩いている。学芸員ラウラ・コゼンデイ(2020年)によれば、キリストの衣の赤は、コチニールという小さな虫からとった色で、鉄からつくる赤よりずっと珍しく、こうした高価な顔料はふつう場面の主役のために取っておかれたという。
技法・様式
館の解説によれば、縦と横の軸による厳しい画面の区分は、ラファエロが師ペルジーノの工房で身につけたものである。一方、中心と周辺の要素を左右対称に結びつけるのはラファエロ自身の特徴で、古典古代の価値に由来する調和の美を求めたものだという。所蔵品目録(1998年)の解説は、右の立つ番兵が、後ろへ引いた脚と反対の腕、頭の回転によって、軽やかに回るような動きを見せる点や、墓の強い遠近法を、ウンブリアの画家たちにはないラファエロらしい性質とする。強く明るい色、番兵の鎧や石棺の蓋の装飾には、ピントゥリッキオの影響もみられるという。
来歴
所蔵品目録によれば、本作は「キンネアードの復活」とも呼ばれ、知られていない祭壇画の裾絵(プレデッラ)の一部だった可能性がある。裏面の銘の一つからは、1955年にスイダが、最初の所有者とみられるジョアッキーノ・ミニャネッリの名を読み取った。館の学芸員トマス・トレド(2020年)によれば、美術館の創設者アシス・シャトーブリアンが、ヴァルテル・モレイラ・サレスとともに、ニューヨークのノードラー画廊で復活祭の日曜日に、帰属の証明書なしに購入した。館は1954年に入手し、1958年にモレイラ・サレスらの寄贈として正式に所蔵品に加えた。
意義
本作は帰属をめぐって長く議論されてきた。所蔵品目録によれば、論点は、オックスフォードのアシュモレアン博物館にあるラファエロの2枚の素描との関係にある。1954年、ロンドンのテート・ギャラリーでの展示の際に、創設時の館長ピエトロ・マリア・バルディが本作をラファエロの作と位置づけ、ロベルト・ロンギらがこれに続いた。その後も多くの研究者がラファエロの作と認めたが、ラファエロの素描をもとにした無名の画家の作とする研究者もいる。館の学芸員は、アシュモレアンの素描が見いだされたことで、バルディの見立てが裏づけられたとしている。