クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《赤い騎兵隊》

Красная конница
《赤い騎兵隊》カジミール・マレーヴィチ
Wikimedia Commons / ロシア美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
カジミール・マレーヴィチ
制作年
1932年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
91 × 140 cm
時代
20世紀
広告

画面の上半分を、濃い青から白へと明るくなる空が占める。地平線の上を、赤い騎兵の小さな群れが列をなして左へ駆け、その下の大地は、黒、赤、白、緑などの水平の帯に塗り分けられている。

概要

《赤い騎兵隊》(露: Красная конница)は、画家カジミール・マレーヴィチが1932年ごろに描いた油彩画である。縦91センチ、横140センチのキャンバスで、サンクトペテルブルクのロシア美術館が所蔵する。晩年の作で、色の帯を重ねた大地の上を、赤い騎兵の隊列が駆ける。日本語の定訳は見当たらないため、ここでは所蔵館の題を訳した。

画面の読み解き

横長の画面を、地平線が上下におよそ6対4に分ける。上の空は、上端の濃い青から地平線近くの白へと少しずつ明るくなる。空と大地の境は一本の黒い線で区切られ、その上を、赤い騎兵たちが左へ向かって駆ける。騎兵の小さな群れは12あり、4つずつ3つの集団に分かれて間をあけて並ぶ。馬は脚を前後に伸ばし、騎手は槍や旗を細い線で掲げる。下の大地は、黒、赤、白、細い青と黄、幅の広い緑、白と赤、黒、茶の水平の帯に塗り分けられ、帯の幅はまちまちである。右下の隅の茶色の帯には、画家の頭文字と年記が赤みを帯びた色で書かれている。所蔵館によれば、この絵では、果てしない空間の揺るぎない静けさと、赤い騎兵のはかなさが対比されている。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。マレーヴィチは1915年に、幾何学的な色の面だけで描く抽象絵画のシュプレマティスムを始めたが、晩年には人や風景の描写に戻った。所蔵館によれば、本作の細い赤い人影は、シュプレマティスムの純粋な色の帯のあいだに溶けていくように見える。騎兵はごく小さく、画面の大半は空と帯の広がりにあてられている。

来歴

所蔵館によれば、本作は1936年に、レニングラードに住む画家の遺族から館に入った。画家はこの前年に没している。館によれば、マレーヴィチは、画面の右隅の「1918年」の年記と、裏面の「10月の首都から赤い騎兵隊が駆ける、ソヴィエトの国境を守るために」という書き込みで、革命をたたえる読み方をわざと固めた。本作は長いあいだ、当局ににらまれた画家の作品のうち、ソヴィエト美術の公式の歴史が認めたただ一つの作品であり、革命と赤軍をたたえる時流に合った題がそれを助けたという。所蔵番号はЖ-9435で、ベヌア館の第76室に展示されている。

意義

所蔵館は、マレーヴィチがこの絵に込めた記号はさまざまに読めるとし、黙示録の赤い馬の騎士を思わせるとも、「世界革命」の新しいしるしとも受け取れるとする。館が引く画家の文章は、指導者たちの呼びかけに従って地の果てを求め、地平線へ向かって走り出した人々を、自分たちがすでに地平線の上に立っていることを忘れた者たちにたとえている。館の解説はこれに重ねて、赤い旗の下で果てしない空間を駆ける騎兵の激しい疾走には目的がないと読む。