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《アザミを持った自画像》

Portrait de l'artiste tenant un chardon
《アザミを持った自画像》アルブレヒト・デューラー
Wikimedia Commons / ルーヴル美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
アルブレヒト・デューラー
制作年
1493年
素材
羊皮紙 / キャンバス / 油絵具
寸法
56.5 × 44.5 cm
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暗い背景の前で、房飾りのついた赤い帽子をかぶった若い画家が、体を斜めに向けたまま目だけでこちらを見る。肩にかかる金色の巻き毛、細かなひだの淡い色のシャツ。胸の前で、とげのある草の小枝を両手に持つ。

概要

《アザミを持った自画像》(仏: Portrait de l'artiste tenant un chardon)は、ドイツの画家アルブレヒト・デューラーが1493年に描いた油彩画である。縦56.5センチ、横44.5センチの羊皮紙に描かれ、のちにキャンバスに貼られた。パリのルーヴル美術館が所蔵する。所蔵館によれば、デューラーが描いた最初の油彩の自画像で、婚約の肖像だった可能性がある。

画面の読み解き

暗い背景の前に、20代はじめの画家が上半身を斜めに向けて立ち、顔をやや傾けて目だけをこちらへ向ける。肩までの長い金色の巻き毛に、房飾りのついた赤い帽子をかぶる。淡い色のシャツには細かなひだが寄せられて赤い紐が何本も横に渡され、その上に赤い縁取りの灰色の上着を羽織る。両手で胸の前に持つのは、とげのある細い葉の草の小枝である。所蔵館はこれをアザミ、あるいはエリンジウムとし、婚約の肖像であれば夫婦の貞節のしるしになるとする。画面の上には「1493」の年記と、古いドイツ語で「わが事は、天に定められたとおりに運ぶ」という意味の銘が書かれている。文化省の作品データベースは、この銘も画家の婚約にかかわるものとする。

技法・様式

羊皮紙に油彩で描かれる。所蔵館の来歴によれば、1840年代、ウィーン近郊のバーデンにあったとき、ウィーンでエラスムス・エンゲルトによって板から布へ移され、そのときに傷んだ。美術ジャーナリストの藤原えりみは、光村図書の連載で、デューラーを独立した作品として自画像を描いた最初の画家とされる人物として紹介する。13歳の素描を別にすれば、生涯の3点の油彩の自画像はいずれも人生の節目に描かれたようで、本作はその最初の一点として結婚に際して描かれたと考えられているという。

来歴

所蔵館によれば、ニュルンベルクのイムホフ家の収集にあった可能性がある。ベルリンの美術館のヴィルヘルム・ボーデは、1873年には1870年以後の修復の傷みと値段の高さを理由に購入に反対し、1897年にも作品を「廃墟」と呼んで退けた。1882年にはライプツィヒの収集家オイゲン・フェリックスの手にあり、1900年にロンドンの画商アグニューが息子から買い、ドイツからの持ち出しは論争を呼んだ。同じ年にパリの銀行家レオポルト・ゴルトシュミットへ渡り、孫のニコラ・ド・ヴィルロワが受け継いだ。第一次世界大戦後、ドイツに帰化していたヴィルロワの財産は敵国人の財産として差し押さえられる。ヴィルロワは収集品を館に遺すつもりだったが差し押さえは解けず、館は1922年3月、競売を避けるため、委員会が定めた30万フランで買い取った。所蔵番号はRF 2382。

意義

藤原えりみの連載によれば、当時の絵に求められたのは礼拝の対象や古典の主題、注文主の地位を称える肖像で、画家の自画像に芸術的な価値を認めて買う客はほとんどいなかった。そのなかで画家が自分の姿だけを一枚に描いたことは、特殊な試みだったという。結婚後まもなくヴェネツィアへ向かったデューラーは、帰国後の27歳ごろに2点目の自画像(プラド美術館)を、1500年に正面を向いた《毛皮のコートを着た自画像》を描いた。