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《シモネッタ・ヴェスプッチの肖像》

Portrait de femme dit de Simonetta Vespucci
《シモネッタ・ヴェスプッチの肖像》ピエロ・ディ・コジモ
Wikimedia Commons / コンデ美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピエロ・ディ・コジモ
制作年
1490年
素材
ポプラ板 / テンペラ
寸法
57 × 42 cm

雲の湧く空と野を背に、真珠を編み込んだ金髪の若い女性が左を向いた横顔で描かれる。胸をあらわにし、肩に縞の布を掛け、首には金の鎖に絡む蛇を巻く。下の縁には名を記した銘がある。

概要

《シモネッタ・ヴェスプッチの肖像》は、フィレンツェの画家ピエロ・ディ・コジモが1490年頃に描いた肖像画で、シャンティイのコンデ美術館が所蔵する。館の記録では、縦57センチ、横42センチのポプラ板にテンペラで描かれ、館の題は《シモネッタ・ヴェスプッチとされる女性の肖像》。館は、本作を館で最も名高い傑作の一つとし、美術史家たちを絶えず悩ませてきた作品と紹介する。かつてはポッライウォーロやボッティチェッリの作とされたこともある。

画面の読み解き

館の解説によれば、シモネッタはジュリアーノ・デ・メディチに愛された若く美しい女性で、「フィレンツェの偶像」と呼ばれ、ボッティチェッリのモデルも務めたが、1476年に23歳で結核のため亡くなった。恋人ジュリアーノが彼女をしのんで本作を描かせたとも伝わる。しかし、画面の下の名を記した銘「SIMONETTA IANUENSIS VESPUCCIA」はのちに加えられた可能性があり、本当に彼女の肖像かは確かでない。もし彼女だとすれば、画家はその死の時15歳ほどだったので、死後の肖像になる。

技法・様式

館によれば、胸をあらわにした女性の肖像は15世紀には珍しい。尾をかむ蛇が死を表し、死が美へ導くという新プラトン主義の寓意として描かれた理想の肖像とも考えられる。女性の前、左には黒い雲と枯れ木があり、後ろの右には葉の茂る木と青い空が広がることも、死を主題とする読みを支える。横顔の肖像はメダルの芸術から来たイタリアの伝統だが、ピエロはそれを現実の風景の前に置いた。宝飾や髪の写実にはフランドル美術の影響がみえ、丸い額と上を向いた鼻はピエロの肖像に特有のもので、理想化された女性像という見方を裏づける。館は、制作の時期を1480年から1520年の間とも記している。

来歴

館によれば、本作は、1568年にヴァザーリがフランチェスコ・ダ・サンガッロの家で見た、首に蛇を巻いたピエロ作の《クレオパトラ》である可能性がある。ただしクレオパトラは蛇が胸をかむ姿で描くのが普通で、図像は合わない。その後ヴェスプッチ家の所蔵となり、1840年に一族の手を離れて、1841年にフレデリック・レゼが手に入れた。1879年のレゼの売立を経てオマール公が入手し、1886年の公の寄贈で館の所蔵となった。所蔵番号はPE 13で、館の記録では貸出が禁じられている。

意義

モデルの名も、肖像か寓意かも定まらないまま、本作は館の代表作として見る者を引きつけてきた。2019年には館の展覧会「裸のジョコンダ」でも紹介された。同じ画家の作品には《プロクリスの死》がある。