《コジモ・イル・ヴェッキオのメダルを持つ男の肖像》
赤い帽子に長い巻き毛の若者が、川の流れる広い風景を背にこちらを見つめる。胸の前で組んだ両手には、金色に光るメダルが掲げられ、老人の横顔が浮き彫りにされている。
概要
《コジモ・イル・ヴェッキオのメダルを持つ男の肖像》は、イタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリが1475年頃に描いた肖像画で、フィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵する。館の記録では、板にテンペラで描かれ、メダルは金箔を施した漆喰でつくられている。縦57センチ、横44センチ。所蔵番号は1890年目録の1488番で、現在は館の収蔵庫にある。館の題は「メダルを持つ若者の肖像」。
画面の読み解き
画面では、赤い帽子をかぶり、肩まで届く巻き毛の若者が、黒っぽい上着を着て、やや斜めに体を向けながらこちらを見つめる。背景には、青空の下に川の流れる緑の野が遠くまで広がる。胸の前で組んだ両手の中には、老人の横顔を刻んだ金色のメダルがある。館によれば、若者が誰かは分かっていないが、手にした金箔の漆喰のメダルにはコジモ・デ・メディチ(イル・ヴェッキオ)が表されている。メダルの銘「MAGNUS COSMUS / MEDICES PPP」が示すとおり、この肖像は「祖国の父」コジモをたたえる政治的な意味を帯びている。
技法・様式
館によれば、メダルは、コジモがその称号を得た1465年から1469年までのあいだに鋳造された貨幣をもとに型取りされたもので、同じ図柄は1469年の細密画にも現れる。日本語版ウィキペディアによれば、メダルは本物の金属のメダルを漆喰で写した「パスティリア」で、褐色がかった金色に塗られて画面にはめ込まれている。図柄が左右反転していないことから、ボッティチェッリは元の型を手に入れたか、メダルから直接型を取ったと考えられている。
来歴
日本語版ウィキペディアによれば、本作ははじめフィリッピーノ・リッピの作とされていたが、ジョヴァンニ・モレッリがボッティチェッリの作と認め、多くの研究者がこれに従っている。制作年は1470年から1477年のあいだとされる。枢機卿カルロ・デ・メディチの収集で初めて記録され、1666年の枢機卿の死後にウフィツィに入った。1991年に修復されている。
意義
日本語版ウィキペディアによれば、モデルが誰かは今も決着していない。メダルをつくった人物の肖像とする説、メディチ家の一員とする説のほか、画家の兄弟アントニオとみる説もあり、これは《東方三博士の礼拝》に描かれた画家の自画像とされる人物との似かよいを根拠とする。ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチとする説もある。同じ記事は、美術史家フォッシがこの若者を、ルネサンスで最も謎めいたモデルの一人と呼んだことを紹介している。