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《指し降ろされた親指》

Pollice Verso
《指し降ろされた親指》ジャン=レオン・ジェローム
Wikimedia Commons / フェニックス美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジャン=レオン・ジェローム
制作年
1872年
素材
キャンバス / 油絵具
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円形闘技場の砂の上で、金の兜の剣闘士が倒れた相手の喉を足で押さえ、観客席を見上げる。白い衣の女たちが身を乗り出し、親指を突き出して合図を送っている。

概要

《指し降ろされた親指》(羅: Pollice Verso)は、フランスの画家ジャン=レオン・ジェロームが1872年に完成させた油彩画である。アメリカ・アリゾナ州のフェニックス美術館が所蔵する。古代ローマの円形闘技場で、剣闘士の戦いが決着する瞬間を描いた歴史画である。

画面の読み解き

手前の砂の上で、金の兜をかぶり、腕に鱗状の防具をつけた剣闘士が、網と三叉の鉾を手放して倒れた相手の喉を足で踏み、観客席を見上げる。左奥にも、すでに倒れた剣闘士が横たわる。フェニックス美術館のブログによれば、勝者は二人の相手を倒し、最後に生き残った者の喉に足をかけて、観客、あるいは皇帝その人に、とどめを刺す許しを求めている。倒れた男は二本の指を上げて慈悲を請うようで、その身ぶりは、ビザンティンやルネサンスのキリスト教の図像にもよく見られるものだという。右上の観客席では、白い衣の女たちが身を乗り出して親指を突き出し、群衆は罵声を浴びせて親指を下に向けているように見える。左奥の貴賓席には皇帝が座り、場内には垂れ幕と旗が掛かる。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。館のブログは、本作を身ぶりと劇的な緊張の絵とする。描かれているのは、皇帝がまだどちらとも合図をしていない、張りつめた一瞬で、敗れた剣闘士が生きるか死ぬか、物語の続きは見る者に委ねられている。闘技場の石組みや装飾、観客の衣装まで細かく描き込んだ画面は、アカデミック美術の歴史画家として知られたジェロームの特徴をよく示す。

来歴

館のブログによれば、ジェロームは1869年より前に本作に取りかかったが、普仏戦争のあいだ制作を中断し、1872年に仕上げた。1873年には私的なサロンで《指し降ろされた親指》を見せ、その後、本作は版画の連作になり、彫刻《剣闘士たち》(1873年)の手本にもなった。フェニックス美術館は1968年に本作を購入した。所蔵番号は1968.52。2010年から2011年にゲッティ美術館、オルセー美術館、ティッセン=ボルネミッサ美術館で開かれたジェロームの回顧展でも、オルセー美術館は本作を紹介している。

意義

題のラテン語 pollice verso は「向けられた親指で」という意味である。館のブログによれば、親指を下に向けるのは敗れた剣闘士に死を命じる合図だという今日の理解は、リドリー・スコットの映画『グラディエーター』などの影響を受けたものだが、それを裏づける史料はない。ラテン語の言葉も上か下かを示しておらず、確かな答えはないという。オルセー美術館は、ジェロームが長く不毛なアカデミック美術の代表とみなされてきたが、いまでは19世紀の偉大なイメージの創造者の一人として認められているとする。