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《卵を料理する老婆》

Old Woman Cooking Eggs
《卵を料理する老婆》ディエゴ・ベラスケス
Wikimedia Commons / スコットランド国立美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ディエゴ・ベラスケス
制作年
1618年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
100.5 × 119.5 cm
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暗い台所で、白い頭巾をかぶった老女が土鍋の卵に木の匙をかざし、そばにメロンとガラスの瓶を抱えた少年が立つ。手前の真鍮の乳鉢や土器の水差しが、闇の中で光を受けて浮かび上がる。

概要

《卵を料理する老婆》(英: An Old Woman Cooking Eggs)は、スペインの画家ディエゴ・ベラスケスが1618年に描いた油彩画である。縦100.5センチ、横119.5センチのキャンバスで、エディンバラのスコットランド国立美術館が所蔵する。2014年にニューヨークのフリック・コレクションで開かれた同館の名品展の解説によれば、画家が故郷セビーリャに暮らし、まだ18か19歳だったころの作品である。台所や居酒屋の人々を食べ物や器とともに描くボデゴンの一点で、スペイン語では「卵を油で焼く老女」を意味する Vieja friendo huevos の題で知られる。

画面の読み解き

暗い台所の右に、白い頭巾をかぶった老女が横顔を見せて座る。片手に卵を一つ持ち、もう一方の手の木の匙を、火鉢にのせた土鍋にかざしている。鍋の中では、割り入れた二つの卵の白身が白く固まりかけている。左には、ひもでくくったメロンを抱え、ガラスの瓶を差し出す少年が立つ。手前には、ナイフをのせた白い鉢、真鍮の乳鉢と乳棒、赤い玉ねぎ、干した唐辛子、水差しと壺が並び、奥の壁には籠と布が掛かる。本作の購入を助成した美術基金(アート・ファンド)の解説によれば、二人の動きは止まったようで、視線は決して交わらない。この絵の大事な出会いはむしろ、乳鉢と乳棒に映る光や、土器の水差しのしみ、玉ねぎや唐辛子の一つひとつの姿、頭巾の下からのぞく老女の耳といった、迫真の描写の中で起きているという。

技法・様式

フリック・コレクションの解説によれば、人物と家財は暗い地から力強く浮かび上がり、老女と少年の少しずれた視線と宙に止まった身ぶりが、場面に緊張を与えている。画家は、木の台や匙、光る真鍮の器から、釉をかけた土器、油の中で固まっていく卵まで、さまざまな素材の質感を描き分けて、並外れた技量を示した。この絵やほかの初期の台所の場面でベラスケスが達した写実は、当時のスペイン美術にとって新しく、画家に名声をもたらした。美術基金によれば、この場面は、器物と同じように動かない生身のモデルを前に描かれ、1623年より前にセビーリャで描かれた居酒屋や台所の場面の連作に属する。

来歴

1909年から翌年にかけてロンドンのグラフトン画廊で開かれた全国貸出展の目録は、スペインの研究者アウレリアーノ・デ・ベルエテの『ベラスケス』(1906年)を引いている。それによれば、18世紀の初めに画家で著述家のアントニオ・パロミーノが不完全ながら書き記したこの絵は、描かれてから長く行方が知られず、やがてサー・チャールズ・ロビンソンの収集に現れて、リッチモンドのサー・フレデリック・クックの手に渡った。この展覧会にはクックが貸し出し、それ以前にも1873年のロンドンのバーリントン・ハウスでの古典絵画展などに並んだ。1955年、美術基金の助成と国の補助金を得て、スコットランド国立美術館が購入した。所蔵番号はNG 2180である。

意義

フリック・コレクションの解説によれば、こうした写実で名を上げたベラスケスは、1623年には24歳でマドリードの宮廷に招かれ、以後は国王フェリペ4世に仕えた。1909年の目録が引くベルエテは、本作の少年が《セビーリャの水売り》のモデルでもあり、少し幼く見えることなどから、本作を《水売り》より数か月早い作とみている。日本では、2022年に東京都美術館の「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」展で初めて公開された。2020年2月には、スペインのファクトゥム財団がエディンバラで画面の凹凸と色を高精細に記録し、セビーリャで画家の生家とされる建物に設ける展示のために、精密な複製をつくった。