クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《夜のキリスト降誕》

《夜のキリスト降誕》ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス
制作年
1490年
素材
板(オーク材) / 油絵具
寸法
34 × 25.3 cm
広告

暗い馬小屋で、飼い葉桶に寝かされた幼子イエスから光が放たれ、のぞき込む聖母と天使たちの顔を照らす。崩れた奥の壁の向こうでは、丘の上の羊飼いたちが空に輝く天使を見上げる。

概要

《夜のキリスト降誕》は、ハールレムの画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスが1490年頃に描いたとされる小さな板絵で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では、おそらくオーク材の板に油彩で描かれ、縦34センチ、横25.3センチ。所蔵番号はNG4081で、1925年に購入され、館の52室に展示されている。館によれば、本作はほぼ例外なくヘールトヘンの作とされ、その短い生涯の晩年に置かれる作品に様式が最も近いことから、1490年頃の制作と考えられる。おそらく個人の礼拝のために作られた。

画面の読み解き

館の解説によれば、画面には、イエスが馬小屋で生まれ、宿屋に場所がなかったので母が飼い葉桶に寝かせたという、ルカによる福音書の伝えるクリスマスの物語が描かれている。飼い葉桶の幼子を、マリア、ヨセフ、礼拝する天使たちが見守り、背後の暗がりから牛とロバがのぞく。崩れかけた馬小屋の奥の壁の向こうには、丘の上で火を囲む羊飼いたちと羊、犬が見え、彼らは空に輝く天使を畏れて見上げている。一人は赤い外套で目を覆い、もう一人はひざまずいて驚きに両手を上げる。

技法・様式

館によれば、馬小屋の場面は幼子から放たれる神の光に照らされている。この考えは、14世紀に広く読まれたスウェーデンの神秘家ビルギッタの著作に由来し、彼女は、生まれた子から太陽も比べものにならないほどの光と輝きが放たれ、ヨセフの置いたろうそくの光は消えてしまったと記した。光に照らされた夜の場面という考え自体はヘールトヘンのものではなく、フーゴー・ファン・デル・グースの失われた2点の夜の降誕図にもとづいている。館は、本作をファン・デル・グースの作より複雑でも野心的でもないが、おそらくより心を打つものとし、闇のなかの光のたまりが親密さと畏れの感覚を生み、見る者を場面に引き込むと述べる。画家は、飼い葉桶の幼子、焚き火、天使という異なる光の源を描き分けている。

来歴

館の所蔵品目録(ローン・キャンベル、1998年)によれば、本作は1900年頃にベルリンの収集家リヒャルト・フォン・カウフマンがパリで買い、その未亡人に受け継がれた。1917年のカウフマンの売り立てで、ユトレヒト近郊のナイエンローデ城のミヒール・オネスの収集に入り、1923年のナイエンローデの売り立てを経てアムステルダムの鋳物業者ハンス・ティーチェの所有となり、1925年に館が購入した。目録によれば、板は四辺とも切り詰められている。館の解説は、かつての画面はもっと色鮮やかで大きかったとし、1901年までに現在の大きさに切られ、1904年にベルリンの個人の収集にあったときに火災で損傷したと述べる。強い熱で絵具が泡立ったことが、聖母の額などに見える小さな丸い欠損の原因とみられ、聖母の衣と外套や空は、もとは青だったがいまは黒く見える。

意義

館の目録によれば、切り詰められる前に描かれた等倍の模写(板、縦45センチ、横31センチ)が、バルセロナのペドラルベス修道院に由来し、同市の司教区美術館にある。館は本作を最も人気のある降誕図の一つとしており、修復の動画では、修復家ジル・ダンカートンが、ニスを取り除いて人々の顔や衣、天使に映るさまざまな光の効果を明らかにし、幼子から放たれる細かな光の筋を描き戻したことを語っている。