《鏡の前の裸の若い女性》
- 作者
- ジョヴァンニ・ベッリーニ
- 制作年
- 1515年
- 素材
- 板(ポプラ) / 油絵具
- 寸法
- 62.9 × 78.3 cm
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館 (GG 97)
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- ヴェネツィア派
裸の若い女性が腰掛けに座り、右手の手鏡をのぞき込みながら、左手を髪を包む布に添える。背後の壁の鏡には後ろ髪が映り、左の窓の外にはヴェネツィアの穏やかな風景が広がる。
概要
《鏡の前の裸の若い女性》(伊: Giovane donna nuda allo specchio)は、ヴェネツィアの画家ジョヴァンニ・ベッリーニが1515年に描いた油彩の板絵である。縦62.9センチ、横78.3センチのポプラ材の板で、上下にそれぞれ1センチの板が継ぎ足されている。ウィーン美術史美術館が所蔵し、館の題は《化粧をする若い女性》。所蔵館によれば、すでに高齢だったベッリーニが、女性の裸体像という新しい「現代的な」主題に取り組んだ作品で、画家が没する前年に描かれた。
画面の読み解き
所蔵館によれば、裸の女性は水平と垂直の線の組み立ての中に収められている。高価な敷物で覆った腰掛けに座り、その後ろの暗緑色の面には鏡が掛けられ、左にはヴェネツィアの風景がのぞいて画面に奥行きを与える。女性は右手にもう一枚の鏡を持ち、それは一方では虚栄(ヴァニタス)の象徴、他方では恥じらいのヴィーナスの持物でもある。二枚の鏡によって、見る者はひとつの視点から女性の頭を二つの方向から見ることができ、それは絵画にしかできない見せ方である。イタリア語版ウィキペディアによれば、背後の鏡には、髪をまとめる豪華なダマスク織りの網の後ろ姿が映る。
技法・様式
ポプラ材の板に油彩で描かれる。所蔵館によれば、主題と風景に同じ色を用いて二つの領域を結びつけ、画面全体を穏やかで統一された気分にまとめている。暖色と寒色、丸い形と角ばった形、近さと遠さ、行為と受動のつり合いのとれた掛け合いの中で、聖母子の画家は若い女性の姿を讃える。日本語版ウィキペディアによれば、窓の主題や窓辺の透明なガラスの器、腰掛けの敷物はフランドル絵画からの引用で、晩年の画家がジョルジョーネの導入した色調の絵画に応えたことを示す。ティツィアーノの同じ時期の作品にみられる官能性はない。
来歴
所蔵館によれば、1638年から1649年までハミルトンの収集にあり、1659年にはブリュッセルのレオポルト・ヴィルヘルム大公の収集に入った。所蔵番号はGG 97。現在は絵画館の第4室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、ベッリーニは自らをほとんど宗教画だけの画家とみなしており、本作はその中の例外である。右の小さな紙片の署名「Joannes bellinus faciebat M.D.X.V.」で、画家は大プリニウスが伝える古代最大の画家アペレスの言い回しを用いている。これも、この作品の本当の主題が絵画の美と創造の力であることを示している。鏡に映る自分の姿に没頭する女性は、同時に瞑想的な観照そのものの姿ともなる。