クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《リリス》

Lilith
《リリス》ジョン・コリア
Wikimedia Commons / アトキンソン美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジョン・コリア
制作年
1887年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
194 × 104 cm

暗い緑の密林を背に、赤みを帯びた金色の長い髪の裸の女性が立つ。足首から腰へと大蛇が何重にも巻きつき、女性は肩にのせた蛇の頭に頬を寄せて目を閉じる。右下に画家の署名と1887年の年記がある。

概要

《リリス》(英: Lilith)は、イギリスの画家ジョン・コリアが1887年に描いた油彩画である。縦194センチ、横104センチ。ユダヤの伝承に登場する女性リリスを、大蛇を身にまとう裸婦として描いた神話画である。イングランド北西部の海辺の町サウスポートのアトキンソン美術館が所蔵し、館は収集の紹介に本作の図版を掲げている。

画面の読み解き

ドイツ語版ウィキペディアによれば、暗い茶と緑の密林を背に、白い肌と背に流れる長い金髪の裸の女性が立ち、密林との強い対比をなす。蛇は寄せそろえた足首から膝を経て下腹まで何重にも巻きつき、そこを覆い隠す。女性は胸のあたりで両手に蛇の胴を支え、その頭を右肩から喉もとへと沿わせ、自分の頬を寄せる。顔と視線は見る者からそれ、肩の上の蛇の頭に向けられている。蛇の褐色は青白い体と対照をなしながら、周りの密林の色を受け継ぐ。メトロポリタン美術館の2004年の展覧会図録は、蛇が危うげに体に巻きつくのに、リリスは脅かされているようにも嫌がっているようにも見えないと記す。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれ、右下に署名と1887年の年記がある。ドイツ語版ウィキペディアによれば、図録は、ゆるやかに垂らした豊かな髪を当時の流行の結い髪と対比させ、なめらかで乳白色の肌を、斑点のある大蛇の湿った体に突き合わせたと指摘する。同時代の雑誌『ブリティッシュ・アーキテクト』は、コリアのように描ける画家は少なく、この蛇を描ける者は片手で数えるほどだと評した。一方、『スペクテイター』は、細部まで写実的で巧みな描写のために、詩情や感情がすべて抜け落ちたと批判した。

来歴

ドイツ語版ウィキペディアによれば、1887年夏、ロンドンのグローヴナー・ギャラリーの展覧会で公開され、同年秋にはリヴァプールのウォーカー・アート・ギャラリーの秋季展にも並んだ。コリアは、イヴより先にアダムに愛された魔女としてリリスをうたうダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの詩(1868年)を作品に添えた。はじめブートル美術館にあり、1970年代にアトキンソン美術館の収集に移った。所蔵番号は BOOAG:188。

意義

ドイツ語版ウィキペディアによれば、本作は2004年にメトロポリタン美術館、2016年にフランクフルトのシュテーデル美術館、2022年にハンブルク美術館の展覧会に出品され、ハンブルクでは美しく危険な女、ファム・ファタルの「原型」として示された。所蔵館も2020年から2021年にかけて、本作を目玉とする展覧会「致命的な魅力――リリスとその姉妹たち」を開いた。ファム・ファタルが、男性の権力の対象から自分の物語の主人公へと変わってきた歴史をたどる展覧会である。ドイツ語版ウィキペディアは、本作を主題の上で、コリアが近かったラファエル前派の作品の系譜に置く。