《シャユ踊り》
- 作者
- ジョルジュ・スーラ
- 制作年
- 1889–1890年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 170 × 141 cm
- 所蔵
- クレラー・ミュラー美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
- 流派
- 新印象派
灯りに照らされた舞台で、踊り手たちがそろって片脚を高く蹴り上げる。手前には後ろ姿の指揮者とコントラバス、口ひげの楽師、右下の隅には舞台を見上げる客の顔がのぞく。
概要
《シャユ踊り》(仏: Le Chahut)は、フランスの画家ジョルジュ・スーラが1889年から1890年に描いた油彩画である。縦170センチ、横141センチのキャンバスで、オランダのクレラー・ミュラー美術館が所蔵する。所蔵館によれば、描かれているのは「シャユ」、つまりカンカンで、女性がスカートを持ち上げて脚を宙に振り上げる、当時としてはきわどい踊りだった。新印象派を代表する作品の一つである。
画面の読み解き
右上から斜めに、踊り手が一列に並んで片脚を高く蹴り上げる。先頭の女性は目を細めて顔を上げ、白いスカートの裾を高く持ち上げて、ばら色のひだをのぞかせる。その後ろには口ひげの男性と女性たちが続き、同じ姿勢をとる。手前の中央には濃い青の服の指揮者が後ろ姿で立ち、左にはコントラバスの渦巻きと、口ひげの楽師が見える。右下の隅には、帽子をかぶった客が舞台を見上げている。上端には白い灯りが並び、左の壁には花の形の灯りがともる。所蔵館によれば、踊り場は暖かな色と輝く人工の光に満ち、踊り手たちは生身の人間というより型のように、リズミカルに同じ動きを繰り返す。踊り手の脚、指揮者の手、男たちの口ひげ、女性たちの口角と目尻、コントラバスの棹、背景の花まで、画面のすべての線と動きが上を向き、踊りと音楽の高揚を伝えている。画面の縁は濃い青の点で囲まれている。
技法・様式
所蔵館によれば、激しい主題にもかかわらず、本作はパリの夜のつかのまの一場面ではなく、念入りに考え抜かれた絵である。スーラは光と色の効果に魅せられ、それを描き出す体系的な方法を探し、華やかな踊りを、無数の細かな絵具の点と線と色の組み合わせによる厳密な体系でとらえた。所蔵館の Google Arts & Culture の解説は、純色の小さな点を並べて目の中で混ぜ合わせる描き方(筆触分割)には画家個人の筆の癖が表れないとする。『ブリティッシュ・アート・ジャーナル』の展評によれば、本作は、線の向きが特定の感情を伝え、上昇する線は陽気さを、下降する線は悲しみを生むという数学者シャルル・アンリの理論を映している。
来歴
同じ展評によれば、ヘレーネ・クレラー=ミュラーが1922年に競売で本作を買った。所蔵館の解説によれば、彼女はどの絵にもこれほど心を奪われたことはないと書き、末の息子が初めて見て「でも、お母さん、踊りなんて買えるの」と言ったことを書き留めている。所蔵番号は KM 107.757 である。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの発表によれば、本作は2025年9月から2026年2月の「ラディカル・ハーモニー ヘレーネ・クレラー=ミュラーの新印象派」展で、初めてイギリスで公開された。展評によれば、所蔵館の外に貸し出されたのは1958年以来のことだった。
意義
同じ展評によれば、画家アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドは1890年、本作をスーラの「線の体系に従った最初の作品」と呼んだ。スーラは翌1891年に31歳で没し、本作は未完に終わった《サーカス》とともに、《グランド・ジャット島の日曜日の午後》に始まる大作の最後の一群となった。