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《散歩》

《散歩》ピエール=オーギュスト・ルノワール
Wikimedia Commons / J・ポール・ゲティ美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピエール=オーギュスト・ルノワール
制作年
1870年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
81.3 × 65 cm
所蔵
J・ポール・ゲティ美術館 (89.PA.41)
流派
印象派
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木漏れ日の差す森の小道で、リボンつきの帽子の若い男が枝をよけ、白い服の女の手を取る。女は顔をそむけ、奥へ進むのをためらうようにも見える。右手には日の当たる細い道が続いている。

概要

《散歩》は、フランスの画家ピエール=オーギュスト・ルノワールが1870年に描いた油彩画で、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館が所蔵する。画面には「A. Renoir. 70.」と署名と年記がある。同館が1998年に刊行したジョン・ハウスの研究書によれば、どこで描かれ、最初に誰が持っていたのかは分かっていない。もとの題も不明で、1898年に競売にかけられたときの題が《散歩》だった。

画面の読み解き

木漏れ日の差す森の小道で、若い男が茂みの枝を払い、細い道を女に通らせようとしている。女は顔をそむけ、森の奥へ進むのを一瞬ためらっているようにも見える。ハウスによれば、女は正面から光を浴びて画面の主役となり、男は帽子や手、ズボンに光の断片を受けるほかは木の葉に溶け込んでいる。日の当たる小道は、男が女を誘う先を示している。男のリボンつきの帽子は、パリ西郊のセーヌ川で舟遊びに興じる人々を思わせ、この荒れた森は庭園や公園ではない。こうした郊外への逢い引きの情景は、ヴァトーの《シテール島への巡礼》以来の「恋の島」の主題につながっている。

技法・様式

ハウスによれば、画面全体に色と明暗の対照をなす小さな筆触が散り、葉、地面、衣服の質感を描き分けながら、筆の動きはつねに目に見える。伝統的な肉付けを退けつつも、色調と筆触の変化が形と奥行きを生み、同時期のマネのような平板さは無い。右下の木の幹や、女の服に重なる小枝が手前の枠となり、女の顔と帽子から握り合う手、男の顔と帽子の赤いリボンへと、桃色と赤の連なりが緑と青の中を導く。軽やかな筆致は、ルノワールが好んだフラゴナールら18世紀のロココ絵画に通じるとされる。

来歴

ハウスによれば、本作は1898年3月30日、パリのオテル・ドゥルオーでのギュスターヴ・グーピーの売り立てに出て、画商デュラン=リュエルが1,050フランで買った。1908年にベルリンの画商パウル・カッシーラーに売られ、収集家や画商の手を経て、1970年代末に英国鉄道年金基金が取得した。エディンバラのスコットランド国立美術館に長く寄託されたのち、1989年4月4日にロンドンのサザビーズで売られ、ゲティ美術館が購入した。1901年にロンドンの国際協会の展覧会で初めて公開された。

意義

ハウスは、本作を求愛と誘惑の物語を思わせる風俗画と、技法によって芸術として示される絵画との境にある作品とみる。ルノワールの後年の作品は筋書きを避けるが、本作では身振りの意味を見る者に委ね、結末を示さない。ハウスはこの組み合わせに、アカデミーの理想主義を退けつつ、新しい教養層に訴えた初期の印象派の姿を見ている。