《大工の聖ヨセフ》
暗い仕事場で、白髪の大工が身をかがめ、両手で錐を木材にねじ込む。その手を止めて見やる先には、幼い子がろうそくを掲げて座り、炎を囲う小さな手が光に透ける。子の顔は明るく照らされ、老人の額の皺を光がかすめる。
概要
《大工の聖ヨセフ》(仏: Saint Joseph charpentier)は、フランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールが1642年から1644年頃に描いた油彩画である。縦137センチ、横102センチのキャンバスで、ルーヴル美術館が所蔵する。大工として働く聖ヨセフと幼いイエスを、ろうそくの光の中に描いた宗教画で、館は画家の生んだ最も忘れがたい図像の一つとする。
画面の読み解き
館の解説によれば、聖ヨセフと幼いイエスが、ろうそくの光の中で向かい合う。宗教の主題は強い人間の次元を帯び、仕事に身をかがめた職人が、そばにいて手もとを照らす幼い息子を見ようと、一瞬手を止める。場面は親密で、静かで、心を打つ。画家は二重の対比を生かした。かすめる光が浮かび上がらせる老人の皺と、子のなめらかで明るい肌との対比、そして道具を固く握る父の力強い手と、炎で指がほとんど透けて見える子の細い手との対比である。画面では、袖をまくったヨセフが錐を両手で木材にねじ込み、赤い服の子は片手で炎を囲いながら父を見上げる。足もとには木材や鑿が転がり、闇がまわりのすべてを包む。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。館によれば、ラ・トゥールはもちろん、老人の美しさを初めて描き、光と若い顔の近さによって皺を際立たせたカラヴァッジョに学んでいる。ローマではホントホルストが1610年代に、幼いイエスに照らされて働くヨセフを少なくとも3度描いたが、ラ・トゥールは構図を記念碑のように大きくし、色調を抑え、線の動きを止め、形を単純にして、静かで瞑想的な詩情に至った。ピエール・ローゼンベールとジャック・テュイリエは、色彩の華やかさを捨てたほぼ単色の構図と、キアロスクーロを極限まで押し進めた光の扱いを指摘する。X線写真では、子の顔の下に別の顔が見つかっている。
来歴
館によれば、本作は1938年にはロンドンの収集家パーシー・ムーア・ターナーの所蔵として知られ、1948年、彼が美術史家ポール・ジャモを記念して館に寄贈した。所蔵番号はRF 1948 27。ラ・トゥールが本当にイタリアへ旅したかを示す記録はなく、年代は研究者により1640年頃から1645年頃まで揺れてきた。1644年に開かれたメスのカルメル会修道院のために描かれたとする説もある。いまはシュリー翼第912室に展示されている。
意義
館によれば、霊性は誰にでもわかる日常から生まれており、人々の心に触れて魂を取り戻そうとした対抗宗教改革の目標にかなっている。美術史家エミール・マールが1932年に指摘したように、聖ヨセフへの信心の高まりは、新しい霊性の重要な側面だった。2016年にはプラド美術館のラ・トゥール展と、画家の生地ヴィック=シュル=セイユの美術館の本作だけの展覧会に出品された。