《マルガリータ・テレサ王女》
- 作者
- フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マソ
- 制作年
- 1665年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 212 × 147 cm
- 所蔵
- プラド美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
赤い垂れ幕を背に、桃色と銀色の縞の広がったスカートの王女が立つ。袖は白い薄布で、胸と手首には赤いリボン。右手に白いハンカチ、左手に小さな花束を持ち、金色の髪を左右に大きく広げている。
概要
《マルガリータ・テレサ王女》(西: La infanta Margarita de Austria)は、スペインの画家フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マソが1665年頃に描いた油彩画である。縦212センチ、横147センチのキャンバスで、マドリードのプラド美術館が所蔵する。スペイン王フェリペ4世の娘マルガリータを描いた全身の肖像画で、長く画家の義父ディエゴ・ベラスケスの作とされてきた。
画面の読み解き
所蔵館によれば、描かれているのはフェリペ4世とマリアナ・デ・アウストリアの娘マルガリータ(1651〜1673)で、このときオーストリアの皇帝レオポルトと婚約しており、1666年に結婚する。画面では、王女が左上から垂れる赤い幕を背に、体をやや右へ向けて立つ。スカートは左右に大きく張り出し、桃色と銀灰色の布に斜めの縞が走る。白い薄布のふくらんだ袖、胸もとの宝石と赤いリボン、腰に斜めにかけた金の鎖が目を引く。右手は白いハンカチを垂らし、左手は小さな花束を持つ。金色の髪は左右に広げて整えられ、向かって左に赤い羽根飾りがつく。左の背後には椅子の背がのぞき、足もとには模様の入った絨毯が敷かれる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、構図と色の両面で、マソが義父で師のベラスケスに多くを負っていることがわかる。画面では、赤い幕と暗い背景の前に銀と桃色の衣装が浮かび、衣の光沢はすばやい筆の跡で示される。所蔵館は、ベラスケスのもとで30年近く働いたマソがその様式をすっかり身につけ、師の作と見まがうほどの質と魅力をもつ作品を生んだとする。
来歴
所蔵館によれば、ベラスケスは1660年に没し、その翌年の1661年4月、空いていた宮廷画家の職にマソが就いた。本作はベラスケスの没後に注文されたとみられ、そのためにベラスケスが手がけなかったと考えられる。王室の収集に属し、1747年から1794年までのマドリードの新王宮のたびたびの目録に記録がある。所蔵番号はP001192で、第12室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、王女の背丈と背後の椅子との比から、とても幼く見えるかもしれないが、古くから指摘されるとおり、顔つきはベラスケスが没した9歳の年よりも上であることを示している。マソは、自分の家族を描いた集団肖像画(ウィーン美術史美術館)の中に、王女の肖像を描く自身の姿を描きこんでいる。同館の百科事典は、マソがベラスケスの描き方を深く身につけていたため、師と弟子のどちらの作か決めがたい作品もあると記す。