《メドゥーサの首》
- 作者
- ピーテル・パウル・ルーベンス
- 制作年
- 1613年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 68.5 × 118 cm
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画
岩場に横たわる女の首が、目を大きく見開き、口を開けて宙を見上げる。髪は無数の蛇となってうごめき、首の切り口からは血が流れ出す。地面には、サンショウウオやクモ、サソリなどの小さな生きものがはう。
概要
《メドゥーサの首》(独: Haupt der Medusa)は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1613年頃に描いた油彩画である。縦68.5センチ、横118センチのキャンバスで、ウィーン美術史美術館が所蔵する。ギリシア神話の英雄ペルセウスに首を斬られた怪物メドゥーサを描いた神話画である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、ペルセウスは計略を用いて、見る者を人も獣も石に変えてしまう、蛇の髪をもつメドゥーサを討った。オウィディウスの『変身物語』が伝えるとおり、斬られた首からしたたる血は蛇に変わった。画面では、横向きに置かれた首が、見開いて飛び出しそうな血走った目で宙を見つめ、口を半ば開く。髪は絡み合う蛇の群れとなって左へ広がり、首の切り口の下には血だまりができて、そこから小さな蛇が生まれ出る。右には白い布がのぞく。手前の地面には、黒と黄のまだらのサンショウウオ、クモ、サソリ、とぐろを巻く蛇などがはい回る。背後の左には暗い空と遠くの野が、右には草の生えた岩肌が見える。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、見開かれ、血走って飛び出す目という激しい描写はルーベンス自身が工房とともに手がけ、蛇などの生きものは動物画の専門家フランス・スネイデルスの手とされる。ルーベンスがほかの画家と分担して一つの画面を仕上げた作例の一つである。首の青ざめた肌、光沢のある蛇の体、赤い血が対照をなし、蛇の一匹一匹は鱗の模様まで描き分けられている。
来歴
所蔵館によれば、1635年から1648年までイギリスのバッキンガム公の収集にあった。1649年にサロモン・コックに抵当として預けられ、同年マルセリス・リブレヒツに渡ったのち、1650年にジャック・ケンプを通じてバッキンガム家に戻った。同年、レオポルト・ヴィルヘルム大公が、ヤコモ・デ・カキオピンの仲介で、兄の皇帝フェルディナント3世のために買い取った。1685年にはプラハの皇帝の収集に記録があり、1880年にプラハからウィーンへ移された。所蔵番号はGG 3834で、絵画館の第20展示室(カビネット)に展示されている。
意義
所蔵館によれば、ルーベンスの時代には、この主題は政治的、あるいは寓意的に、徳の敵に対するストア派の理性の勝利のしるしと受け取られた。同館によれば、ルーベンスは《メドゥーサの首》を2つの版で描いており、ルーベンスの全作品目録『コルプス・ルーベニアヌム・ルートヴィヒ・ブルヒャルト』の神話画の巻で扱われる予定である。