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《フレイミング・ジューン》

Flaming June
《フレイミング・ジューン》フレデリック・レイトン
Wikimedia Commons / ポンセ美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
フレデリック・レイトン
制作年
1895年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
119.1 × 119.1 cm
流派
唯美主義
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橙色の薄い衣をまとった女が、大理石のベンチに身を丸めて眠っている。背後では夏の海が白く光る。一度は忘れられ、1960年代に民家の暖炉の上から再発見された一枚である。

概要

《フレイミング・ジューン》(英: Flaming June)は、フレデリック・レイトンが1895年に描いた油彩画である。縦横とも119.1センチの正方形の画面。プエルトリコのポンセ美術館が所蔵する。物語や教訓ではなく色と形の調和そのものを目的とする唯美主義の立場を、橙一色の衣に包まれた眠る姿で示した作品である。

画面の読み解き

女は大理石のベンチの上で身を丸め、右腕を枕にして眠る。薄い橙色の衣が体の線に沿って幾重にも折れ、画面の中央を大きな渦のように占める。背後の欄干の先では夏の海が白く光り、上辺には金色の帯状装飾が走る。右上に差しかかるのは有毒のキョウチクトウの枝で、眠りと死が隣り合っていることを示す印と読まれてきた。物語は語られず、見るべきものは色と形の釣り合いに絞られる。芸術のための芸術の主張が画面の姿をとった例といえる。

技法・様式

体を折り畳んだ姿勢は、レイトンが西洋美術の頂点の一つとみなしていたミケランジェロの、フィレンツェのメディチ家礼拝堂にある《夜》を下敷きにしているとされる。正方形の画面は当時としては珍しく、円弧を描く体と衣の渦がその枠のなかで釣り合う。もとは別の作品《夏のまどろみ》のために、大理石の浴槽を飾る意匠として考えられた形が出発点だった。衣の橙は薄く重ねた絵具を透かして光り、奥の海の白と強い対比をつくる。

来歴

1895年のロイヤル・アカデミー展に出品番号5番で並んだ。ヴィクトリア朝絵画の評価が地に落ちた1930年代に行方が分からなくなり、1960年代の初めにロンドン南部バタシーの民家で、暖炉の上に板で囲い込まれた状態で見つかる。キングズ・ロードの店に出ていたところを若いアンドルー・ロイド・ウェバーが見て祖母に50ポンドの借用を頼んだが、「ヴィクトリア朝のがらくた」と断られたという逸話が残る。1963年、プエルトリコの実業家ルイス・A・フェレーが千ドルに満たない額で買い取り、自ら設立したポンセ美術館に収めた。所蔵番号63.0406。

意義

忘れられていたヴィクトリア朝絵画が20世紀後半に見直される流れを、そのまま体現した一枚である。今日では複製やポスターを通じて広く知られ、2024年から2025年にかけてはロンドンのロイヤル・アカデミーで単独の展示が組まれた。所蔵館の本館は2020年1月の地震で被災して休館が続いており、本作を含む所蔵品は各地の巡回展で公開されている。