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《堕天使》

L'Ange déchu
《堕天使》アレクサンドル・カバネル
Wikimedia Commons / ファーブル美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
アレクサンドル・カバネル
制作年
1847年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
121 × 189.7 cm
所蔵
ファーブル美術館 (2026年6月26日〜11月8日、シェルブール=アン=コタンタンのトマ・アンリ美術館へ貸出中)

翼を折り畳んだ裸の若者が地に横たわり、組んだ腕の陰から天を睨みつけている。見える片方の目には涙が一筋ある。頭上の空では、白衣の天使たちが勝ち誇って飛び去っていく。

概要

《堕天使》(仏: L'Ange déchu)は、アレクサンドル・カバネルが1847年に描いた油彩画である。縦121センチ、横189.7センチ。南フランス、モンペリエのファーブル美術館が所蔵する。ローマ賞を得てヴィラ・メディチに滞在していた24歳の画家が、留学の成果としてフランスへ送った二度目の作にあたる。

画面の読み解き

画面の左半分を、裸の若者が斜めに占める。背には藍と褐色の大きな翼が折り畳まれ、体の下に敷かれている。両腕を顔の前で組み、その陰から目だけをのぞかせて上方を睨む。見える片方の目からは涙が一筋落ちている。髪は赤みを帯び、風に乱れる。右半分は明るい空で、白い衣の天使たちが列をなして飛び、楽器を鳴らして神を讃える。右手前には苔むした岩と茨が伸び、地平線の上に灰紫の雲が横に走る。かつての栄光と今の失墜が、画面の左右にそのまま分けて置かれている。

技法・様式

主題は聖書とミルトン『失楽園』の系譜に属する。人体はミケランジェロやラファエロに学んだ理想の造形で、アカデミック美術が求めた仕上げの水準を満たしている。一方、悪の側に立つ者を古代の英雄そのままの均整のとれた姿で描き、正面からの説明を避けて腕の陰に表情を隠す扱いは、当時の規範からは踏み込みすぎと受け取られた。背景は灰と淡い青紫に抑えられ、ほとんど抽象に近い空間として処理されている。

来歴

1847年から1848年にかけてローマのヴィラ・メディチで描かれ、留学生が本国へ送る二度目の作品として提出された。その後は長く画家自身の手もとに残り、1889年5月にパリのジョルジュ・プティ画廊の競売にかけられる。同じ年、画家の弟バルテルミー・カバネルがファーブル美術館へ寄贈した。所蔵番号889.2.1。近年は交流サイトを通じて若い世代に知られるようになり、この一点を目当てに同館を訪れる人も多い。2026年6月26日から11月8日まで、シェルブール=アン=コタンタンのトマ・アンリ美術館で開かれる「反逆の天使——19世紀の芸術における悪魔」展に貸し出されている。

意義

アカデミーの中心にいた画家が、経歴のごく初めに残した例外的な作である。磨き上げた技術はそのままに、天を睨む敗者の顔を主題に据えたことで、19世紀の規範の内側から感情の表現がはみ出した瞬間が記録されている。