《ダナエ》
- 作者
- レンブラント・ファン・レイン
- 制作年
- 1636–1643年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 185 × 202.5 cm
- 所蔵
- エルミタージュ美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
天蓋つきの寝台に裸の若い女が横たわり、白い枕にもたれて、左から差し込む光へ右手を上げる。カーテンの陰では老女がこちらをうかがい、寝台の上には金色のキューピッドの像が光る。
概要
《ダナエ》(蘭: Danaë)は、オランダの画家レンブラント・ファン・レインが1636年に描き、1643年までに自ら描き直した油彩画である。縦185センチ、横202.5センチの大きなキャンバスで、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館が所蔵する。ギリシア神話の王女ダナエを、等身大に近い裸婦として描いた神話画である。
画面の読み解き
金の装飾のついた天蓋の寝台に、裸のダナエが横たわる。白い枕に上体をあずけ、左から差し込む光のほうへ右手を上げる。光は彼女の体と白い敷布を照らし、寝台の手前の床には脱いだ室内履きが置かれ、右には赤い布をかけた卓、左下には寝台の脚の金の彫刻がのぞく。左のカーテンの陰では老女が光の方をうかがい、寝台の上の飾りには金色のキューピッドの像がある。オランダ美術史研究所(RKD)の目録は主題を、金の雨に姿を変えたユピテルがダナエのもとを訪れる場面とする。ただし画面に金の雨は描かれず、かつては「ヤコブを待つレア」「マルスを待つヴィーナス」「ダビデ王を待つバテシバ」とも呼ばれてきた。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。RKD の目録によれば、本作は1636年におそらく完成し、その後、遅くとも1643年までにレンブラント自身が描き直した(『レンブラント絵画コーパス』第3巻、A119)。キャンバスの糸の密度は、フランクフルトにある《ペリシテ人に目を潰されるサムソン》の布ときわめて近く、同じ反物から切り出されたとみられる。画布はもとは少し大きかった。左下には、署名と年記の一部「Remb(...) f 1(..) 6」が残る。
来歴
RKD の目録によれば、本作は、1656年に作られたレンブラントの財産目録の「ダナエである大きな絵」と、1660年のクララ・デ・ファラールの遺産目録の「レンブラント・ファン・ラインの大きな絵、ダナエ」にあたるとみられる。その後フランスのクロザ家に入り、パリのティエール男爵ルイ・アントワーヌ・クロザが所有した。1772年、ディドロの勧めとトロンシャンの交渉により、クロザのコレクションが一括でエカチェリーナ2世のために買い取られ、本作もエルミタージュに入った。所蔵番号はГЭ-723。
意義
1998年の報道によれば、1985年6月15日、本作は展示室でナイフで2度切りつけられ、濃硫酸を浴びせられた。近代の名画への破壊行為として最も激しいものの一つとされる。修復家エヴゲーニー・ゲラシモフらは12年をかけて修復し、損なわれた部分を描き足して元の姿に戻すことも、傷を残したままにすることも退けた。遠くから見ると周囲の絵具と溶け合う単色で、失われた部分を補う中間の道を選んだのである。館長ミハイル・ピオトロフスキーは、かつての傑作そのものではないが、なおレンブラントの傑作であると語った。