《ペリシテ人に目を潰されるサムソン》
- 作者
- レンブラント・ファン・レイン
- 制作年
- 1636年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 219.3 × 305 cm
- 所蔵
- シュテーデル美術館 (2025年9月から修復のため非展示)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画 / バロック
洞窟のような暗がりに外の光が鋭く差しこみ、兵士たちが床に倒れた大男を押さえつけて、その目に短剣を突き立てる。宙に上がった足の指は苦痛に縮み、奥では切った髪とはさみを手にした女が、光の出口へ逃れながら振り返る。
概要
《ペリシテ人に目を潰されるサムソン》(独: Die Blendung Simsons)は、オランダの画家レンブラント・ファン・レインが1636年に描いた油彩画である。縦219.3センチ、横305センチ、重さ113キロの大きなキャンバスで、シュテーデル美術館が所蔵する。旧約聖書『士師記』の英雄サムソンが捕らえられ、目を潰される場面を描いた歴史画で、館はレンブラントの最も暴力的で、最も大きな絵の一つとする。
画面の読み解き
館の解説によれば、神が授けたサムソンの人並み外れた力は、一度も切ったことのない髪に宿っていた。ペリシテ人の愛人デリラはその秘密を聞き出し、眠るサムソンの髪を切って同胞を呼ぶ。洞窟のような暗い室内に舞台の照明のような強い光が差しこむなか、兵士たちはサムソンを押し倒して鎖で縛り、短剣をその目に突き立てる。苦痛のあまり、宙に上がった足の指は思わず縮こまる。左手前ではターバンを巻いた兵士が、反った刃をサムソンに向けて身構える。奥では、はさみと切った髪の束を手にしたデリラが、勝ち誇り、魅入られ、嫌悪するような表情で犠牲者を振り返る。館は、レンブラントがはさみと髪をデリラ自身に持たせ、場面を洞窟の中へ移して、物語を極限まで研ぎ澄ませたとする。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。画面下の中央に「Rembrandt F 1636」の署名と年記がある。館の記事によれば、あわてて襲いかかる兵士たちの動きはちぐはぐで、サムソンを引き倒す兵士は自らその下敷きになり、後ろの兵士は手かせをうまく扱えず、目を突く兵士は短剣を刃のほうで握っている。レンブラントの早い名声の理由の一つは劇的な光の演出にあり、本作はそれを極めて高い水準で示している。館は、1年後の1637年にアムステルダムに劇場が開いたことにふれ、当時の人々が好んだ大きな芝居のようだとする。
来歴
館によれば、本作は1731年より前からウィーンとヴュルツブルクのシェーンボルン伯家にあった。1905年、館長ルートヴィヒ・ユスティが同家と33万6千マルクの値で話をまとめたが、館だけでは払えず、数日のうちに85人の個人が16万7700マルクを寄せ、市と美術館協会も大きな額を出して、同年5月に購入が成立した。館は、長い歴史の中でも最も華々しい購入の一つとする。所蔵番号は1383。2025年9月から3〜4年をかけた修復と調査が始まり、いまは展示されていない。
意義
館によれば、聖書のサムソンの物語は、性と裏切りの危うさを戒めるとともに、髪が伸びて力を取り戻した盲目の英雄が、自らの死とともに敵を滅ぼす勝利で終わる。スペインと長く戦ったオランダの人々は自らを神に選ばれた新しい民とみなし、旧約聖書の主題を好んだ。館は、この場面をレンブラントほど直接に、むごく描いた画家はいないとし、本作をオランダ17世紀絵画の収集の要とする。完成以来、見る者の多くを熱狂させ、一部を衝撃で震わせてきた。