《ヴィーナスの帯を解くキューピッド》
- 作者
- ジョシュア・レノルズ
- 制作年
- 1788年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 127.5 × 101 cm
- 所蔵
- エルミタージュ美術館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- ロココ
赤い幕の下、草の上にもたれた女性が、腕で顔の半分を隠しながらこちらを見て微笑む。幼いキューピッドがその体に乗り、腰を締める青い帯の端をつかんで引っ張る。
概要
《ヴィーナスの帯を解くキューピッド》(英: Cupid Untying the Zone of Venus)は、イギリスの画家ジョシュア・レノルズが1788年に描いた油彩の神話画である。縦127.5センチ、横101センチで、エルミタージュ美術館が所蔵する。愛の神キューピッドが、母ヴィーナスの腰の帯を解こうとする場面を描く。画家自身による同じ構図の3点のうち、最後に描かれた作品である。
画面の読み解き
ヴィーナスは草むらで後ろにもたれ、腕で顔の半分を覆いながら、微笑んでこちらを見る。向けられた視線をはぐらかすような、しなを作った身ぶりである。キューピッドは小さな体を母の上に乗せ、上目づかいに顔をうかがいながら、腰を締める青い絹の帯の両端をつかんで引く。すぐ後ろには木が立ち、枝に掛かった赤い布が女神の腕に影を落とす。最初の版では、ヴィーナスの左ひじ近くの草むらに蛇が描かれ、「草の中の蛇」という別題の由来となった。本作では蛇は省かれたと長く考えられてきたが、2017年に館が行った調査で、草の中に見えにくい蛇の頭が見つかった。サー・ジョン・ソーンズ美術館によれば、ヴィーナスのモデルは、のちのハミルトン夫人、若き日のエマ・ハートだった可能性が高い。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。全体を暖かい色でまとめ、帯の青い寒色で対比を強めている。テート・ブリテンが所蔵する最初の版は縦124.5センチ、横99.1センチで、本作はそれよりわずかに大きい。ソーンズ美術館によれば、1827年に同館の最初の案内書を書いたジョン・ブリトンは、2点目の版を、ティツィアーノの豊かで深い色調に、ヴェネツィアの巨匠の作には見られない愛らしい女性の顔を兼ね備えると評した。
来歴
最初の版は1784年、初代カリスフォート伯爵ジョン・プロビーの注文で描かれ、同年のロイヤル・アカデミー展に出品された。1871年にテート・ギャラリーが購入している。2点目は1785年、画家の姪メアリー(のちのトモンド侯爵夫人)のために描かれ、1821年5月の彼女の旧蔵品の競売でジョン・ソーンが535ポンド10シリングで買った。カリスフォート伯爵は、友人のポチョムキン公に贈るため、改めて本作を注文した。ポチョムキンは冬宮の自室に置いたが、1791年の死後、女帝エカチェリーナ2世が買い取った。所蔵番号は ГЭ-1320。現在は冬宮の第300室に掛かる。
意義
本作はレノルズの最も人気のある作品の一つで、画家の生前から数多く模写された。ロシアの美術家アレクサンドル・ベノワは、エルミタージュにあるレノルズの3点のうち「最もエレガント」と評した。1984年にはソ連の切手の図柄にも選ばれている。