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《キスされた唇》

《キスされた唇》ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
Wikimedia Commons / ボストン美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
制作年
1859年
素材
パネル / 油絵具
寸法
32.1 × 27 cm
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マリーゴールドの花を背に、豊かな赤い髪を垂らした女性が欄干に腕を重ねてこちらを見つめる。髪には白いバラを挿し、指先に小さな花をつまみ、手前には林檎がひとつ置かれる。黒い衣と金の首飾りが白い肌を際立たせる。

概要

《キスされた唇》(伊: Bocca Baciata)は、イギリスの画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティが1859年に描いた油彩画である。縦32.1センチ、横27センチの小さな板に、花を背にした女性を半身で描いた肖像画である。ラファエル前派の画家ロセッティが、官能的で装飾的な主題へ転じた転機の作とされ、ボストン美術館が所蔵する。

画面の読み解き

館の解説によれば、モデルはロセッティの恋人ファニー・コーンフォースで、見る者を見つめているのか、鏡に映る自分を見ているのかもしれない。官能的なモデルは理想化された美を表し、贅沢な装飾がひたすら目を楽しませる。ロセッティ・アーカイヴの解説によれば、背景を埋めるマリーゴールドは花言葉で苦痛や悔しさを表し、欄干の林檎はアダムとイヴの堕落の物語を、髪の白いバラは無垢を示すとみられる。題は、絵の裏に画家の手で記されたボッカッチョ『デカメロン』第2日第7話の結びの一句、「キスされた唇は幸運を失わず、月のように新しくなる」からとられた。

技法・様式

板に油彩で描かれ、左下にモノグラムがある。アーカイヴによれば、本作はロセッティが1850年代の水彩から油彩へ主な手段を戻した作品で、それまでの白い湿った地に代えて赤い下塗りを用いたことに、ティツィアーノとヴェネツィア派への傾倒が表れている。画家は1859年11月13日、友人ウィリアム・ベル・スコットへの手紙で、肌を点描のように描くラファエル前派の癖を避けようと努め、うまくいったと書いた。美術史家アラン・ボウネスは、初期のフィレンツェやシエナの15世紀絵画に代わって、ヴェネツィアの16世紀絵画が手本となった、まったく新しい像だと評している。

来歴

アーカイヴによれば、ジョージ・プライス・ボイスが1859年に40ポンドで注文した。ボイスは日記に、ロセッティが16世紀後半の衣装でファニーの見事な肖像を描いたと記している。1897年のボイスの売り立てでフェアファックス・マレーが買い、その後も持ち主を変えて、ウィリアム・ランドルフ・ハーストらの手を経た。1980年、ジェイムズ・ローレンスからボストン美術館に贈られた。所蔵番号は1980.261。

意義

アーカイヴによれば、1860年に本作を見たウィリアム・ホルマン・ハントは、ロセッティが「哲学を完全に変え」、修道院的な感情を捨てて快楽主義に向かったと評した。画家自身も先の手紙で、肌を描く手早い習作として、この種の人物をさまざまに描きたいと書いている。