《ベルシャザルの饗宴》
- 作者
- レンブラント・ファン・レイン
- 制作年
- 1636–1638年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 167.6 × 209.2 cm
- 所蔵
- ロンドン・ナショナル・ギャラリー (NG6350)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
暗い宴の席で、金の外衣に大きなターバンと小さな王冠の王が、壁に光る文字を書く手に振り向く。卓の金の器が傾いて葡萄酒がこぼれ、まわりの客たちは目を見開いて身を引く。
概要
《ベルシャザルの饗宴》(英: Belshazzar's Feast)は、オランダの画家レンブラント・ファン・レインが1636年から1638年頃に描いた油彩の歴史画で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。縦167.6センチ、横209.2センチのキャンバス。主題は旧約聖書のダニエル書5章で、バビロンの王ベルシャザルが、父ネブカドネザルがエルサレムの神殿から奪った聖なる器で宴を開いていると、壁に神の手が現れて文字を書く場面を描く。所蔵館によれば、画家が30歳ほどのころの作で、注文によるものか、物語画の画家として名を上げるために描いたものかは分かっていない。
画面の読み解き
所蔵館によれば、金の外衣に大きなターバンと小さな王冠を着けた男がベルシャザルである。聖なる器で食事を出すことは冒瀆とみなされた。宴のさなかに雷鳴がとどろき、灰色の雲の中に手が現れて壁にヘブライ文字を書いた。預言者ダニエルは、王が秤にかけられ足りないと分かった、と告げ、王は数時間のうちに死んだ。画面では、王が鎖を鳴らして器を倒し、金の杯から葡萄酒がこぼれる。王の隣の、目を見開き真珠をずらして不安げに指を絡める女性には、最初の妻サスキアをモデルにしたとみられる。左奥の暗がりからは、リコーダー奏者が鋭い目でこちらを見ている。
技法・様式
所蔵館によれば、深い影と鋭い光の筋(キアロスクーロ)がこの劇的な瞬間をとらえ、毛皮や長い髪、真珠とビロード、レースと柔らかな肌が蝋燭の光に輝く。人物が画面いっぱいに配され、右の女性を見下ろすような視点が、逃げ場のない息苦しさを生む。壁の文字について、画家の隣人で友人のユダヤ人学者メナセ・ベン・イスラエルは、文字が右から左だけでなく上から下へも書かれていたためバビロンの賢者たちには読めなかったと解釈しており、レンブラントはその並べ方に従った。王のモデルの男は、ほかの作品にも登場し、メトロポリタン美術館のトローニー《東洋風の衣装の男》でもよく似た衣装を着ている。
来歴
所蔵館の目録によれば、署名と年記「Rembrand/F 163(?)」は右の倒れかかる女性の肩の上にあるが、最後の数字は失われている。キャンバスの四辺は、早い時期の裏打ちのときに細い楔形に切り詰められたとみられる。1736年にイングランドのノーズリー・ホールで初めて記録され、ハムレット・ウィンスタンリーが第19代ダービー伯ジェームズ・スタンリーのために125ポンドで買った。1964年、ナショナル・ギャラリーがアート・ファンドの援助を得てダービー伯から購入した。
意義
所蔵館によれば、レンブラントの住むアムステルダムはカルヴァン派の町で、教会は簡素だったが、人々は家に宗教画を含む絵を飾り、聖書をよく読んでいた。彼らは、天の目に見張られた悪しき王の結末と、その物語の戒めをよく知っていた。画面の奥からこちらを見るリコーダー奏者の鋭い目も、その天の目に重ねられている、と館は解説する。