《老人と孫》
暗い壁を背に、赤い衣の老人が腕の中の幼い子を見下ろす。老人の鼻は大きくこぶ状にふくらみ、子は赤い帽子の下から老人を見上げて、その胸に小さな手を添える。右の窓の外には、曲がりくねる道と青い岩山の風景が広がる。
概要
《老人と孫》(仏: Portrait d'un vieillard et d'un jeune garçon)は、イタリアの画家ドメニコ・ギルランダイオが1490年に描いたテンペラの肖像画である。縦62.7センチ、横46.3センチのポプラ材の板に、赤い衣の老人と、その腕に抱かれた幼い子を描く。画家の最もよく知られた作品の一つで、ルーヴル美術館が所蔵する。
画面の読み解き
ja.wp によれば、赤い服の老人が、同じく赤い服の幼い子を抱いて室内に座り、二人は暗い壁を背に光を受けている。右奥の窓からは、起伏のある土地と曲がりくねった道の、ギルランダイオの背景らしい風景が見える。老人の毛皮のついた衣とフード、子の優美な重ね着と帽子は、高い身分の家柄をうかがわせる。いちばんの特徴は老人の鼻の変形で、皮膚の病の鼻瘤を示している。額にも小さないぼが描かれ、白い髪や目もとの皺まで細かくとらえられている。画家はそれを、外見と内面を結びつけた当時の人相学のように欠点のしるしとはせず、自然で共感をこめた描き方をした。子が老人の胸に手を置き、老人が優しい表情で見下ろす姿に、二人の親密な瞬間が表れている。
技法・様式
所蔵館によれば、支持体はポプラ材の板である。ja.wp によれば、老いた賢者の顔と、子の愛らしい横顔の対比が画面を際立たせる。遠くに風景ののぞく室内に人物を置く構図はフランドルの肖像画と主題の上でつながるが、15世紀半ばまでにはイタリアでも一般的になっていた。かつてジョルジョ・ヴァザーリが持っていたギルランダイオの素描《老人の頭部》(ストックホルムの国立美術館)には、本作と同じ人物が描かれている。
来歴
所蔵館によれば、19世紀にフィレンツェの美術商ステファノ・バルディーニが1870年から1880年頃に所有し、1880年に館が購入した。ja.wp によれば、それ以前にベルリンの美術館が保存状態を懸念して受け取りを断った経緯があり、1996年に洗浄と修復が行われた。所蔵番号は RF 266。現在はドノン翼のグランド・ギャラリー(第710室)に展示されている。
意義
所蔵館によれば、老人をリドルフィ家の一員やフランチェスコ・サセッティとみる説もあるが、確かではない。ja.wp によれば、本作はクワトロチェント(15世紀)の肖像画の中でも独特の写実で知られ、美術史家バーナード・ベレンソンは「イタリアの内外を問わず、15世紀の絵画にこれ以上人間的な作品はない」と述べた。