《雪中の東方三博士の礼拝》
雪の降りしきるフランドルの村で、人々が荷を運び、氷に開けた穴から水を汲む。その左端、崩れかけた小屋の軒下で、東方三博士がひざまずいて幼子を拝んでいる。
概要
《雪中の東方三博士の礼拝》は、ネーデルラントの画家ピーテル・ブリューゲル(父)が1563年に描いた油彩の板絵で、スイス、ヴィンタートゥールのオスカー・ラインハルト・コレクション アム・レマーホルツが所蔵する。館の記録では、オーク材の板に描かれ、縦35センチ、横55センチ。左下に「M · D · LXIII / B R V E G E L」の年記と署名がある。館によれば、本作はスイスの公共の美術館にある唯一のブリューゲルの絵で、ヨーロッパ美術のなかで初めて、降ってくる雪片をとらえた絵画である。
画面の読み解き
画面いっぱいに雪が降りしきり、雪をかぶった家並みと裸の木々のあいだを、大勢の人々が行き交う。中央には荷を背負った人や馬の列が続き、右手前の凍った川では、人々が階段を下りて水を汲み、子どもが橇に乗っている。日本語版ウィキペディアは、雪の中で荷物を運ぶ人々や、氷の穴から水を汲む人々が描かれていると説明する。主題の礼拝は左端にある。崩れかけた小屋の軒下で、聖母が幼子を抱き、その前に東方三博士がひざまずき、まわりに見物の人々が集まる。同じ記事は、聖母子と三博士がぼんやりと左端に描かれている点を独特だとし、降りしきる雪に目を奪われて主題を見逃すほどだという評を紹介している。
技法・様式
館の報道発表によれば、2019年の展覧会に先立って、館はウィーン美術史美術館や各国の専門家と共同で本作を詳しく調べ、マクロ撮影、X線、斜光、赤外線写真、赤外線反射撮影による画像を得た。ベルギー王立文化財研究所(KIK-IRPA)の年輪年代測定は、板の材の年代を明らかにしただけでなく、本作とブリューゲル(父)のほかの3点の板が、バルト海東部の同じ一本のオークの木から取られたことを示した。報道発表は、ブリューゲルの冬の場面を当時まったく新しいジャンルとし、本作を、イーゼル画で降る雪を描いた史上初めての作品と呼ぶ。
来歴
スイス放送 SRF が2019年11月22日に伝えた通信社の記事によれば、ヴィンタートゥールの収集家オスカー・ラインハルトが1930年に本作を購入した。日本語版ウィキペディアによれば、本作の制作年は従来1567年とされていたが、ベルギー王立文化財研究所のクリスティナ・カリーが画面の年記から1563年と読むべきだとし、本作はブリューゲルの冬景色のなかで最も早いものと位置づけられるようになった。同じ記事によれば、息子のピーテル・ブリューゲル(子)は本作の模写を多く描いたが、そこには降りしきる雪は描かれていない。館の報道発表も、来歴と子による模写、ラインハルトがこの画家に寄せた関心を、展覧会で資料とともに紹介したと記している。
意義
館の報道発表は、本作を、ブリューゲルの風景への新しい取り組みと、聖書の物語を同時代の人々の世界へ置き換える手法を示す作品とする。展覧会では、ボスの図像からの借用、季節の役割、フランドルの村の暮らし、小氷期による寒冷化の影響もあわせて取り上げられた。日本語版ウィキペディアは、本作が公現祭(1月6日)の礼拝をブラバントの村の情景として描くことで、画面に現実感を与えていると説明している。