《太陽系儀の講義》
- 作者
- ジョセフ・ライト
- 制作年
- 1764–1766年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 147 × 203 cm
- 所蔵
- ダービー博物館・美術館
- 時代
- バロック・ロココ
暗い部屋の中央に、真鍮の輪を組んだ太陽系の模型が置かれ、中心のランプが周りの人々の顔を照らす。赤い衣の哲学者が説明し、子どもたちは身を乗り出して輪の中をのぞき込む。ランプは手前の人影に隠れている。
概要
《太陽系儀の講義》(英: A Philosopher Giving that Lecture on the Orrery, in which a Lamp is put in the Place of the Sun)は、ジョセフ・ライトが1764年から1766年にかけて描いた油彩画である。縦147センチ、横203センチ。イングランド中部のダービー博物館・美術館が所蔵する。太陽の位置にランプを置いた太陽系の機械模型「オーラリー」を囲み、講義に聞き入る人々を、そのランプの光だけで照らし出している。所蔵館は、画家の最も名高い作品の一つとしている。
画面の読み解き
暗い部屋の中央に、真鍮の輪を組み合わせたオーラリーが置かれ、その中心のランプの光が、周りに集まった人々の顔を下から照らす。ランプそのものは、手前で背を向けた人物の黒い影に隠れて見えない。奥では、赤い衣をまとった白髪の哲学者が模型に手を添えて語り、その左では若い男が帳面に書き留めている。模型の縁には二人の子どもが身を乗り出して、輪の中をのぞき込む。右では頬に手を当てた男と、横顔を見せる男が説明に聞き入り、左手前には、つばの広い帽子をかぶった若い女性が座って模型を見つめる。右上の暗がりには、垂れ幕と本棚がのぞく。
技法・様式
所蔵館によれば、この絵が描かれたころ、科学の講演や実演は人気のある娯楽で、科学と技術への関心が高かったダービーでは、市庁舎で定期的に講演が開かれていた。こうした催しと、町の科学者たちとの親交が、画家にこの主題を思いつかせたのかもしれない。主題の選び方には前例がなく、劇的な光の扱いが人々の心をとらえたという。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、本作を画家が描いた「科学的」な主題の最初の作品とする。光源を一つに絞り、暗い室内から顔や手だけを浮かび上がらせる強い明暗の対比(キアロスクーロ)が、講義に引き込まれた人々の表情の違いを際立たせる。
来歴
所蔵館によれば、1766年にロンドンで初めて展示されると高く評価され、詩まで詠まれた。所蔵館は、人工の光の効果を得意とする独創的な画家として名声を確立した3点の主題画の、2点目にあたるとしている。1884年、市民の募金で購入され、ダービー博物館・美術館に寄贈された。現在は同館の「ジョセフ・ライト・ギャラリー」に展示されている。
意義
2025年11月から2026年5月にかけて、ロンドン・ナショナル・ギャラリーで、画家のろうそくの光の絵を初めて本格的に取り上げた展覧会「ライト・オブ・ダービー 影の中から」が開かれ、本作も出品された。展覧会は2026年6月から11月までダービーに巡回し、同館の《空気ポンプと鳥の実験》(1768年)と本作が、80年ぶりに画家の故郷にそろった。ナショナル・ギャラリーはこの展覧会で、ライトを啓蒙思想の旗手とみる見方を問い直し、夜の場面で死や憂い、懐疑、崇高を探った画家として捉え直している。