《ホイッスルジャケット》
- 作者
- ジョージ・スタッブス
- 制作年
- 1762年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 296.1 × 248 cm
- 所蔵
- ロンドン・ナショナル・ギャラリー (所蔵番号NG6569、第34室)
- 時代
- バロック・ロココ
淡い金色の何もない地に、栗毛の馬が後脚で立ち上がる。前脚を折り曲げて宙に浮かせ、首をひねってこちらを振り向く。淡い色のたてがみと長い尾がなびき、つややかな毛並みの下には筋肉の起伏がくっきりと浮かぶ。後脚の一本の先だけが白い。
概要
《ホイッスルジャケット》は、イギリスの画家ジョージ・スタッブスが1762年頃に描いた油彩画である。縦296.1センチ、横248センチの大きなキャンバスで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。所蔵館によれば、1759年にヨークの競馬で勝ち、のちに種牡馬となったアラブ種の栗毛の牡馬ホイッスルジャケットを等身大で描いた肖像で、1762年頃に第2代ロッキンガム侯爵チャールズ・ワトソン=ウェントワースが注文した。
画面の読み解き
所蔵館によれば、スタッブスは乗り手も鞍も風景も描かず、馬を淡い金色の無地の背景の前に置いた。王ジョージ3世を乗せる予定だったといったうわさもあるが、乗り手が計画されていた証拠はないという。馬は後脚で立ち、前脚を折り曲げて宙に浮かせる「ルヴァード」の姿勢をとる。これは馬場馬術の技で、ふつうは高い身分の乗り手と結びつき、ルーベンスやベラスケスも騎馬肖像に用いた。馬は首をひねってこちらを振り向き、淡い色のたてがみと尾がなびく。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、本作にはリンカンシャーでの解剖を通じてスタッブスが身につけた解剖学の知識が生きている。一方で、画面の劇的な効果を高めるために、姿勢には自由な変更も加えた。つややかな栗毛の下に浮かぶ筋肉や骨格の起伏が、何もない背景によっていっそう際立つ。
来歴
所蔵館によれば、本作はロッキンガム侯爵の注文で描かれ、侯爵の甥の第2代フィッツウィリアム伯爵ウィリアム・ウェントワース=フィッツウィリアムに受け継がれて、第10代伯爵まで同家に伝わった。1997年、文化遺産宝くじ基金の支援を得て、同館がフィッツウィリアム家の管財人から購入した。所蔵番号はNG6569で、第34室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、本作は古典彫刻の記念碑的な性格と、生きた動物の写実とを結びつけた作品で、自然をたたえるロマン主義を先取りするものとしてしばしば見られる。等身大の馬だけを主題とする大画面は、肖像画と動物画の境界を越える試みでもあった。