《姦淫の女》
- 作者
- レンブラント・ファン・レイン
- 制作年
- 1644年
- 素材
- 板(オーク材) / 油絵具
- 寸法
- 83.8 × 65.4 cm
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
金の柱と祭壇が闇の中にそびえる神殿の石段で、白い肌着の女がひざまずいて泣く。黒衣の老人やターバンの男たちが取り囲み、兵士が彼女のベールをつかむなか、茶色の衣のキリストが静かに女を見下ろしている。
概要
《姦淫の女》は、オランダの画家レンブラント・ファン・レインが1644年に描いた油彩の板絵で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では、バルト海沿岸またはポーランド産と同定されたオーク材の板に描かれ、縦83.8センチ、横65.4センチ。署名と年記がある。所蔵番号はNG45で、第22室に展示されている。1824年に館が購入した。
画面の読み解き
館の解説によれば、女がひざまずいて泣き、大きな洞窟のような闇がそのまわりを包む。一筋の光が石段の上の彼女を照らし出す。その背後には、ほのかな蝋燭の光が落とす影の中から、巨大な金の柱と高い金の祭壇が浮かび上がり、闇の中へとそびえて、下に集まった人々を小さく見せている。祭壇のそばではぼんやりとした礼拝者たちが古い儀式を続けているが、女は男たちの群れの中でただ一人である。黒衣の髭の老人たちと、赤いビロードの衣に輝く大きなターバンを巻いた男がいる。光に照らされた節くれだった手が女を指し、武装した兵士が、うなだれた頭から滑り落ちそうな薄いベールをつかむ。長い髪は肩から白い肌着の上に垂れ、上衣さえまとわないその姿に女の恥がさらされている。男たちの目は一人の人物に注がれる。茶色の衣に赤い髭と長い髪のキリストが、落ち着いて動かずに女を見下ろしている。
技法・様式
館によれば、男たちの緊張、キリストの思慮深いようす、泣き続ける女から、レンブラントが描いたのは、危険な若い説教者を陥れかねない決断の瞬間だとわかる。黒衣の男が群衆を黙らせるように唇に指を当てている。日本語版ウィキペディアによれば、ナショナル・ギャラリーの科学調査で、黄土、ヴァーミリオン、赤いレーキ、鉛白、鉛錫黄、アズライト、骨炭といった限られた顔料が使われていることがわかった。また本作の板は、ベルリン絵画館の《洗礼者ヨハネの説教》などと同じ一本の木から作られていた。
来歴
館の来歴によれば、本作はアムステルダムのヤン・シックスのために描かれたと言われてきたが、その可能性は低く、彼の収集にあった証拠もない。おそらく1657年のアムステルダムの画商ヨハネス・デ・レニアルメの財産目録で最も高く評価された同じ主題のレンブラントの絵で、1705年のヤーコプ・ヒンローペンの収集の目録にも載る。1718年までにはヤン・シックスの甥ウィレム・シックスの収集にあり、1803年に画商コクレールに売られた。同年パリのラフォンテーヌが買い、1807年にイギリスへ運んで、翌日ジョン・ジュリアス・アンガースタインに売った。1824年にアンガースタインの収集とともに館が購入した。
意義
館によれば、この場面はヨハネによる福音書の、姦淫の現場で捕らえられた女の話である。キリストの答え「あなたがたのうちで罪のない者が、まずこの女に石を投げなさい」は、キリスト教の歴史で最も名高い言葉の一つとなった。館は、17世紀のオランダではプロテスタントの教会が聖像で飾られなくなった一方、聖書の物語を描いた絵には市場があり、若いレンブラントは心を打つ劇的な描写の力で称賛されたと説明している。