《不釣合いな結婚》
薄暗い聖堂で、婚礼の儀式が進む。勲章を胸に下げた白髪の老人が、こわばった顔で隣を見下ろす。白い婚礼衣装に花冠をつけた若い花嫁は目を伏せ、司祭に指輪をはめられようと手を差し出す。右端では、腕を組んだ若い男が一行をにらんでいる。
概要
《不釣合いな結婚》(露: Неравный брак)は、ロシアの画家ヴァシーリー・プーキレフが1862年に描いた油彩の風俗画である。縦174センチ、横137センチのキャンバスで、モスクワのトレチャコフ美術館が所蔵する。所蔵館によれば、主に風俗画を描いたプーキレフの名は、同館の収集の中でも最も劇的な作品の一つであるこの絵と分かちがたく結びついている。19世紀半ば、愛ではなく打算による、しばしば年の離れた結婚は珍しくなく、裕福な商人は没落した貴族と縁を結んで身分を得ようとし、貴族はそれで家計を立て直した。
画面の読み解き
所蔵館によれば、画面は教会の婚礼の場面である。白い婚礼衣装は聖堂の蝋燭の赤い炎に照らされ、画家はまるで血のような輝きで、時代の慣習の無垢な犠牲者に印をつけている。死人のように青ざめた花嫁の隣で、満足げな老将軍が胸の動揺を隠しつつ、花嫁のふるまいを見守る。人物はほぼ等身大で画面の縁いっぱいに寄せられ、窮屈な空間のなかで、見る者は聖堂に居合わせた参列者のように感じる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、当時の風俗画としては異例の大画面で、構図は現実の出来事らしさを強めるよう組み立てられている。下絵の段階から構図はほとんど変わらなかったが、人物の姿は練り直された。老人の固く張りつめた顔と、花嫁の生気に満ちた顔が並び、右端で腕を組み憤る若者には、友人の肖像に代えて画家自身の顔が描かれた。老人の背後に横顔で描かれた客は額縁職人グレベンスキーで、彼は若さと老いの結びつきを植物文様で表した珍しい彫刻の額をこの絵のために作った。
来歴
所蔵館によれば、1871年にパーヴェル・トレチャコフが L.N. ボリソフスカヤから購入した。所蔵番号はИнв.350。ロシア語版ウィキペディアによれば、画家は1875年に同じ作品を描き直しており、その作はミンスクのベラルーシ国立美術館にある。
意義
所蔵館によれば、題材は当時の絵画や文学で好まれたが、本作の悲劇的な調子は、それを社会の不幸、屈辱的な商取引として人々に見直させた。のちにレーピンは、この絵が「一人ならぬ老将軍の血を騒がせ」、歴史家コストマーロフは若い女性との結婚を思いとどまったと書いている。本作は画家に教授の称号をもたらし、ロシアの写実的な風俗画の代表作となった。