《三人の哲学者》
- 作者
- ジョルジョーネ
- 制作年
- 1508–1509年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 125.5 × 146.2 cm
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- ヴェネツィア派
夕暮れの風景の中、暗い岩山のふもとに三人の男が集まる。座った若者は直角定規を手に岩山を見上げ、白いターバンの男と、長いひげの老人が並んで立つ。老人は三日月を描いた紙とコンパスを持つ。
概要
《三人の哲学者》(独: Die drei Philosophen、伊: I tre filosofi)は、ジョルジョーネが1508年から1509年にかけて描いた油彩画である。縦125.5センチ、横146.2センチ。ウィーン美術史美術館が所蔵する。夕暮れの風景の中で、岩山のふもとに三人の男がたたずむ。所蔵館によれば、三人は1525年の記録ですでに「哲学者」と呼ばれていたが、近年の研究では、古代ギリシアのピタゴラスと、その師とされたペレキュデスとタレスを描いたものとみられている。ヴェネツィア派の画家ジョルジョーネの、数少ない確実な作品の一つである。
画面の読み解き
画面の左半分を、木の葉の茂る暗い岩山が占め、その奥に洞窟のような影が口を開ける。右では、三人の男がそれぞれに異なる姿勢をとる。手前に座る若い男は白いシャツに緑の衣をまとい、直角定規を手にして、膝の上の紙から顔を上げ、岩山のほうを見つめている。その隣に立つ男は白いターバンを巻き、赤い長衣を着て、白い布を両手で持つ。右端の年老いた男は頭巾をかぶって長いひげをたくわえ、黄色の外套をまとい、三日月と数字を描いた紙とコンパスを手にしている。背後には木立が並び、その間から、夕焼けの空の下に緑の丘と小さな町が見える。遠くの山は青くかすんでいる。
技法・様式
所蔵館が引く1525年の覚え書きは、本作を「風景の中の三人の哲学者の油彩画で、二人は立ち、一人は座って日の光を眺めている。驚くほど見事に描かれた岩とともに」と記している。所蔵館は、泉の湧く岩山を、おそらくアポロンの神託所ディディマとみている。物語をはっきりとは語らず、光の移ろいと風景の気分で画面をまとめる描き方は、ジョルジョーネが個人の収集家のために描いた絵の特徴をよく示している。人物の背後に広がる丘や町は、遠ざかるほど青くかすむ空気遠近法で描かれ、風景そのものが画面の主役となっている。
来歴
所蔵館によれば、1525年にはヴェネツィアのタッデオ・コンタリーニが所有し、1545年にはダリオ・コンタリーニの手にあった。1636年にヴェネツィアのバルトロメオ・デッラ・ナーヴェの収集に入り、1638年から1649年までイギリスのハミルトンの収集にあったのち、レオポルト・ヴィルヘルム大公の収集を経て同館に伝わった。画面の左側は大きく切り詰められている。所蔵番号は絵画館111番で、第4キャビネットに展示されている。
意義
所蔵館では2025年7月3日、ベルガモのアカデミア・カッラーラのジュリア・ザッカリオットが、本作をめぐる新しい発見を講演した。ヴェネツィアのマルチャーナ図書館にある、日記作者マリン・サヌードが書き留めたラテン語の文章集から、ルネサンスの時代に本作の下に古代の『マエケナスへの哀歌』から取ったラテン語の銘が添えられていたことがわかったという。講演は、注文主がほぼ確実にタッデオ・コンタリーニであることや、本作と大地と天空の測量を扱う科学書との関係にも光を当てた。500年近く解釈が続いてきた謎の絵に、今も新しい手がかりが加わっている。