《和平の使者たち》
窓に虹の見える船室で、軍服の男たちとリンカーンが椅子に掛けて向き合う。左の将軍が指を立てて語りかけ、奥の将軍とリンカーンは耳を傾け、右には提督が座る。リンカーンは顎に手を当て、もの思いにふける。
概要
《和平の使者たち》は、アメリカの画家ジョージ・ピーター・アレキサンダー・ヒーリーが1868年に描いた油彩画で、ホワイトハウスの収集に属する。ホワイトハウス歴史協会によれば、縦119.7センチ、横159.1センチのキャンバスで、1947年にアメリカ合衆国政府が購入した。南北戦争の終わりの直前の、大統領と将軍たちの会談を描いた歴史画である。
画面の読み解き
協会が引く『ホワイトハウスの美術』の解説によれば、題だけがこの厳かな絵の意味を伝える手がかりである。北軍の蒸気船リヴァー・クイーン号の船尾の船室に座るのは、左からウィリアム・T・シャーマン少将、ユリシーズ・S・グラント中将、エイブラハム・リンカーン大統領、デイヴィッド・D・ポーター少将で、ピーターズバーグ陥落の1週間足らず前に、続く和平の条件について話し合うために集まった。
技法・様式
解説によれば、人物たちは奇妙に孤立して見え、意味は行動よりも人物そのものに込められている。それぞれの背後の羽目板と窓が、一人ひとりの隔たりを強める。頭はみなまっすぐ立っているが、リンカーンだけは違い、内へ向かう姿勢と沈んだ表情が彼をさらに際立たせる。その背後には、近づく平和の象徴である虹が輝く。
来歴
協会によれば、1865年3月20日、グラントはリンカーンを、リッチモンドに近いジェームズ川沿いのシティ・ポイントの本営に招き、リンカーンは24日にリヴァー・クイーン号で着いた。シャーマンもグラントを訪ね、ポーターも加わって、3月27日と28日の2度、4人は船上で会った。2度目の会談では話がたびたび和平の結び方に及んだ。4月2日の夜、ピーターズバーグは陥落した。ヒーリーは1864年8月からリンカーンの肖像に取り組んでおり、それが本作に結実した。
意義
解説は、本作がアメリカ史の転換点を抑えた調子で記録した絵であり、陰鬱な人物たちは、演じ手というより観客として、アポマトックスでの南軍の降伏という結末を待っていると述べる。リンカーンの考え深い姿勢は、のちに画家が描いたリンカーンの肖像のもとにもなった。