《扇を持った女性》
- 作者
- ディエゴ・ベラスケス
- 制作年
- 1640年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 95 × 70 cm
- 所蔵
- ウォレス・コレクション
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- スペイン・バロック絵画
暗い背景の前に、黒いレースのベールをかぶった女性が立ち、まっすぐこちらを見る。白い手袋の片手に開いた扇を下げ、もう一方の手を胸もとに当てて、腰には金の鎖と青いリボンが下がる。
概要
《扇を持った女性》は、スペインの画家ディエゴ・ベラスケスが1640年頃に描いた油彩の肖像画で、ロンドンのウォレス・コレクションが所蔵する。館の記録では、カンヴァスに描かれ、縦95センチ、横70センチ、額を含めると縦122.5センチ、横99センチ。所蔵番号はP88で、館の大ギャラリーに展示されている。館は本作を、国王フェリペ4世の宮廷画家ベラスケスの最も名高く、謎めいた肖像画の一つとする。
画面の読み解き
画面では、暗い褐色の背景の前に、黒いレースのベールを頭からかぶった女性が立ち、まっすぐこちらを見つめる。首には黒っぽい玉の首飾りをかけ、胸もとの大きく開いた暗い色の服を着ている。白い手袋をはめた右手には開いた扇を下げ、左手は胸もとのベールに当てている。その左手首からは金の鎖が垂れ、腰のあたりで青いリボンに結ばれている。日本語版ウィキペディアは、美術史家の大高保二郎らの著書を引いて、胸もとの大きく開いた服は17世紀のスペインではきわめて珍しく、腰の青い飾りリボンや、その下の十字形の懐中時計は、当時スペインではなくフランスで流行したものだと説明する。
技法・様式
館によれば、モデルは長くスペインの婦人と考えられてきたが、近年の研究は、彼女がスペイン人ではなくフランス人だった可能性を示している。館の作品頁は、モデルについて、画家自身の家族の一員とする説などさまざまな提案があったなかで、女性の衣装がフランスとスペインの流行を混ぜていることを詳しく調べたうえでの、シュヴルーズ公爵夫人とする説がより説得力があるとする。日本語版ウィキペディアによれば、公爵夫人のほかの肖像とは似ていないとする研究者もおり、のちのマハに先立つスペインの「タパーダ」(ベールで顔を隠した女性)とみる説もある。
来歴
館の記録によれば、本作はおそらく1801年にリュシアン・ボナパルトの収集に入り、1816年5月16日のロンドンでの競売に出された。1839年までにマリスマス侯爵アレハンドロ・アグアドが所有し、1843年3月27日のパリでの競売を経て、ジェームズ・ド・ロスチャイルド男爵のために購入され、画商ラヌーヴィルを経た。1847年12月7日に第4代ハートフォード侯爵リチャード・シーモア=コンウェイが1万5000フラン(約600ポンド)で手に入れた。
意義
館の目録によれば、ベラスケスが描いたことの知られる唯一のフランス女性は、スペイン生まれのフランス王妃アンヌ・ドートリッシュの親しい友人だったシュヴルーズ公爵夫人マリー・ド・ロアンである。公爵夫人は政治的な陰謀によって権勢を誇るリシュリュー枢機卿の敵意を買い、1637年にスペインへ逃れた。館は、イングランドのチャッツワースのデヴォンシャー・コレクションに、おそらく少し若いころの同じ女性を、ずっと控えめな姿勢とはっきりスペイン風の服装で描いた肖像があるとしている。