《グレイアム家の子供たち》
- 作者
- ウィリアム・ホガース
- 制作年
- 1742年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 160.5 × 181 cm
- 所蔵
- ロンドン・ナショナル・ギャラリー (所蔵番号NG4756、第34室)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- ロココ
華やかな室内に、4人の子どもが並ぶ。姉はサクランボを手に乳母車の末っ子をあやし、妹は絹の裾をつまんで踊る。椅子の少年は小鳥のオルガンを回して籠のヒワに聞かせるが、その背後では猫が椅子の背に爪を立て、鳥をねらっている。
概要
《グレイアム家の子供たち》(英: The Graham Children)は、ウィリアム・ホガースが1742年に描いた油彩の集団肖像画である。縦160.5センチ、横181センチのキャンバスで、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。所蔵館によれば、国王ジョージ1世と2世の王室薬剤師として栄えたダニエル・グレイアム(1695〜1778年)と2人目の妻メアリー・クリスプの4人の子を、ロンドンのペル・メルの邸宅で描いたもので、等身大の人物がホガースの最大級の画面を満たしている。
画面の読み解き
所蔵館によれば、年長の順にヘンリエッタ・キャサリン(9歳)、リチャード・ロバート(7歳)、アンナ・マリア(5歳)、そして赤ん坊のトマスが描かれる。金色の乳母車はトマスのもので、銀の果物皿と交差したカーネーション(葬儀の花)は死を思い出させる。卓上の時計の上には砂時計と鎌を持つ有翼の童子がのり、針はトマスが息を引き取った時刻かもしれない1時45分ごろを指す。リチャードは膝の小鳥のオルガンを回して籠のヒワに歌を教える。オルガンの箱には、亡き妻エウリュディケを音楽で取り戻そうとしたオルフェウスが描かれる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、キリストの受難を象徴するヒワは、ここではトマスを表し、椅子の背に爪を立てる猫に驚かされている。それは、死が子どもの一人を突然奪ったことと重なる。アンナ・マリアは絹の錦の裾を広げて踊り、ヘンリエッタは天国の果実とされるサクランボを差し出してトマスの手を導く。ヒワとサクランボは、キリストによるトマスの復活への望みを示す。ヘンリエッタの前掛けの優美な曲線には、ホガースの唱えた「美の線」が表れている。
来歴
所蔵館によれば、トマスは作品の完成前に亡くなっており、その死がおそらく注文のきっかけだった。ホガースは亡くなった赤ん坊の顔をチョークで写生し、それをもとに描いた(素描は大英博物館所蔵)。本作は1934年、デュヴィーン卿が美術基金を通じて同館に寄贈した。所蔵番号はNG4756で、第34室に展示されている。画面には署名と年記がある。
意義
所蔵館によれば、本作は子ども時代と命のはかなさを描き出している。神のほかには、ホガースの肖像だけがトマスを記憶の中に「生かしておく」ことができるのだという。にぎやかな子どもたちの姿の裏に喪失を織り込んだ、18世紀イギリスの肖像画の傑作である。