《合奏》
- 作者
- ヨハネス・フェルメール
- 制作年
- 1663–1666年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 72.5 × 64.7 cm
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
白と黒の床の部屋で、鍵盤楽器の前に座る女性と、背を向けた男性、楽譜を手に立つ女性が音楽に向き合う。左の机には敷物がかかり、床には弦楽器が横たわる。奥の壁には二枚の絵が掛かっている。
概要
《合奏》は、オランダの画家ヨハネス・フェルメールが1663年から1666年頃に描いた油彩の風俗画である。縦72.5センチ、横64.7センチのキャンバスで、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館が所蔵していたが、1990年に盗まれ、今も行方がわからない。旧所蔵館の所蔵番号はP21w27で、館の「ダッチ・ルーム」に掛けられていた。館によれば、本作はイザベラ・スチュワート・ガードナーが初めて手に入れた大きな作品で、専門家の助けを借りずに自ら買ったものだった。
画面の読み解き
旧所蔵館の解説によれば、整った家の居間で、二人の女性と一人の男性が音楽に打ち込んでいる。立っている女性は楽譜を持ち、手を上げて仲間のために拍子をとる。座った男性は謎めいた様子でこちらに背を向け、飾りのついた肩帯を掛けている。左の大きな机の上にはリュートが置かれ、床にはヴィオラ・ダ・ガンバが横たわる。画面の中ほどでは、黄色い胴着と白い繻子のスカートの女性が、蓋に風景を描いた鍵盤楽器の前に座る。床は白と黒の石の市松模様で、奥の壁には風景画と、人物を描いた絵が並んで掛かる。
技法・様式
館によれば、右の壁に掛かる絵は、ディルク・ファン・バビューレンの《取り持ち女》である。この画中画の主題は、何か不適切なことが起きているとほのめかすようにも見え、こうしたオランダの音楽の場面を道徳の戒めと読む研究者もいる。しかし、この《取り持ち女》はフェルメールの家が実際に持っていた絵だった。部屋の人々は音楽に没頭して互いを見ず、見られていることにも気づいていないようで、その集中は割って入ることを許さない。机のリュートや床のヴィオラ・ダ・ガンバは、三人がこれから手に取るのか、ほかの誰かが加わるのか。館は、フェルメールがあえて謎の感覚をつくり出し、この社交の情景を、見る人の解釈にゆだねられた風俗喜劇にしていると述べる。その謎は、画家の名高い光の反射の描写によっていっそう深まる。光は女性たちの真珠(ガードナー夫人のお気に入りだった)や、男性の肩帯の金糸にきらめく。
来歴
旧所蔵館の来歴によれば、本作は1780年5月10日、アムステルダムでのヨハネス・ローデワイク・ストラントワイクの競売で、おそらくディーデリク・ファン・レイデンのためにA・デルフォスが315フローリンで買った。1804年にパリでファン・レイデンの競売にかけられて画商パイエが買い、その後もパリとロンドンの競売に何度か現れた。1892年12月5日、パリのオテル・ドゥルオーで開かれた批評家テオフィル・トレ=ビュルガー(1807〜1869年)の遺産の競売で、ガードナーがパリでの代理人フェルナン・ロベールを通じて29,000フランで落札した。館は、トレ=ビュルガーがフェルメールの名声をよみがえらせるのに大きな役割を果たした人物で、そのことが本作をとりわけ重要なものにしたと述べる。
意義
旧所蔵館によれば、1990年3月18日の未明、警官を装った二人の男が館に入り、81分のあいだに13点の美術品を奪った。本作はその一つで、同じ夜にはレンブラントの《ガリラヤの海の嵐》も盗まれている。館の作品頁は、本作について「1990年に盗難」と記している。作品はいまも見つかっておらず、写真でしか見ることができない。