《立ち上がる都市》
- 作者
- ウンベルト・ボッチョーニ
- 制作年
- 1910年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 199.3 × 301 cm
- 所蔵
- ニューヨーク近代美術館
- 時代
- 20世紀
- 流派
- 未来派
足場の組まれた建物と煙を吐く煙突を背に、巨大な赤い馬が画面を斜めに突き進む。綱にすがる男たちは引きずられるように身をのけぞらせ、人も馬も、細長い色の筋の渦にのみ込まれていく。
概要
《立ち上がる都市》(伊: La città che sale、英: The City Rises)は、イタリアの画家ウンベルト・ボッチョーニが1910年に描いた油彩画である。縦199.3センチ、横301センチの大きなキャンバスで、ニューヨーク近代美術館が所蔵する。建設が進む近代都市で、力強い馬と働く人々がせめぎ合う姿を描いた作品で、未来派の画家宣言に署名した1910年に取り組んだ大作である。トレッカーニの『イタリア人名辞典』は「目もくらむような、力強い労働と産業の寓意」と評し、美術史家ジョシュア・C・テイラーは「労働をたたえる未来派の大いなる賛歌」と呼んだ。
画面の読み解き
画面の中央を、青い馬具をつけた巨大な赤い馬が、左から右へ斜めに突き進む。その首にかけた綱に男たちがすがり、体をのけぞらせて引きずられている。左には白い馬が首をひねって跳ね上がり、その足もとでは人々が倒れ込むように身を投げ出す。上端には足場の組まれた建物が並び、右上には煙突が煙を吐いて、都市が建設のさなかにあることを示す。人も馬も輪郭がほどけ、赤や白、青の細長い筆の筋が、渦を巻くように画面全体を満たしている。右下に「U. Boccioni」の署名がある。
技法・様式
『イタリア人名辞典』によれば、画家は1910年に未来派の画家宣言に加わってからも、1911年の後半にパリでキュビスムに触れるまでは、分割主義(ディヴィジョニズム)とポスト印象派に基づく探究を続けていた。本作でも、色を混ぜずに細長い筆触のまま並べる筆触分割の手法が、画面の隅々まで使われている。1961年にニューヨーク近代美術館が刊行した素描の図録で、テイラーは、一連の習作の中で一頭の巨大な馬が次第に構図を占めていき、ただの元気な動物ではなく、沸き立つ大都市のすさまじい力の象徴になったと述べる。はじめ《労働》と呼ばれた説明的な絵は、こうして喚起力のある《立ち上がる都市》となった。
来歴
『イタリア人名辞典』によれば、1912年2月にパリのベルネーム=ジュヌ画廊で開かれた最初の未来派展は、その後ロンドン、ベルリン、ロッテルダム、ブリュッセルを巡回し、ロンドンで作曲家フェルッチョ・ブゾーニが本作を買った。所蔵館の来歴によれば、ブゾーニ夫妻は1912年3月にロンドンのサックヴィル画廊で購入してベルリンに置き、1950年頃にはニューヨークの息子ラファエロ・ブゾーニの手にあった。1951年に同館がサイモン・グッゲンハイム夫人基金でラファエロから買い取り、所蔵番号は507.1951。1961年の同館の「未来派」展にも出品された。2026年9月時点で展示室には出ていない。
意義
テイラーは、画家がこの作品で、それまでの画風の束縛から完全に解き放たれる造形の原理を自ら編み出したと述べる。テート美術館によれば、未来派は、近代の世界のダイナミズムとエネルギーを美術にとらえようとした20世紀初めのイタリアの運動で、新印象派とキュビスムの要素を用いて、近代の生活の躍動を表す構図を作った。画家は亡くなる1916年に、本作を買ったブゾーニの肖像(ローマ国立近代美術館)も描いている。