《黒い犬を連れた自画像》
- 作者
- ギュスターヴ・クールベ
- 制作年
- 1842–1844年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 46.5 × 55.5 cm
- 時代
- 新古典・ロマン
白い岩を背に、つば広の黒い帽子の若者が地面に座り、少し高みからこちらを見すえる。黒いケープの膝にパイプを持つ手を置き、傍らには長い耳の黒いスパニエルが寄り添う。右には谷と青空が広がる。
概要
《黒い犬を連れた自画像》(仏: Autoportrait dit Courbet au chien noir)は、フランスの画家ギュスターヴ・クールベが1842年から1844年に描いた自画像である。縦46.5センチ、横55.5センチのキャンバスに油彩で描かれ、パリ市立プティ・パレ美術館が所蔵する。1844年、クールベの作品として初めてサロンに入選した絵である。
画面の読み解き
所蔵館の目録によれば、クールベは、パイプを手に黒いスパニエルと並んで座る自分を、故郷オルナン近くの風景の前に描いた。つば広の黒い帽子の下で、長い黒髪の若者は、少し下から見上げた角度で描かれ、こちらをじっと見る。黒いケープの裾から鮭色の裏地がのぞき、灰色のズボンの膝に置いた手には、細いパイプがある。右には長い耳の黒い犬が寄り添う。背後には白っぽい大きな岩がそびえ、その岩に、握りの曲がった杖と、本かスケッチ帳が立てかけてある。画面の上端は岩陰が弓なりに縁取り、右には雲の流れる青空の下に、谷と木立、遠くの丘が広がる。館のサイトは、スケッチ帳と黒いスパニエルを連れて描く主題を探し歩く、ボヘミアン風の優雅さをまとった若い画家の姿とし、風景を、画家が何よりも愛した生地ドゥー県の起伏の多い土地とする。左下には青い絵具で「Gustave Courbet 1842」と署名と年記がある。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、明るい空には、画家がのちにみごとな腕前で使いこなす、パレットナイフで絵具を置く技法の始まりが見られる。館はまた、画家が構図を何度も描き直したことを記し、画面はもとは上辺が弓形の枠に合わせて構想され、扉の上に掛ける絵だった可能性があるとする。日本語版ウィキペディアは、人物を見上げる角度もそのためとみる。また、人物を野外に置く構図は18世紀イギリスの肖像画家たちにならったもので、ロマン主義の時代に流行したものだという。
来歴
所蔵館によれば、本作は画家の若い日の自画像の連作の一つで、今に残る数少ない初期作の一点である。1844年のサロンに「作者の肖像」の題で出品され、目録番号は414だった。日本語版ウィキペディアによれば、画家は同年2月21日の両親への手紙で、4度目の応募をすると書き、《ロトと娘たち》《風景の習作》とともに本作を送ったが、入選したのは本作だけだった。左下の「1842」の年記について、所蔵館は、青で書かれた珍しいもので、画家がのちに書き加えたにちがいないとする。画家の没後は妹ジュリエットが持ち、1909年にパリ市へ贈った。館によれば、この年に贈られた6点の一つで、同年2月23日には館に「クールベの間」が開かれた。所蔵番号はPPP731で、庭園階の第5室に展示されている。
意義
ポンタルリエ美術館によれば、犬は1842年に友人たちから贈られたスパニエルで、画家は両親への手紙で知らせている。同館の1842年の小さな自画像にもこの犬が描かれ、本作では成長した犬が画家と並ぶ。同館は、本作の入選が画家の名を知らせたとする。所蔵館も、若い画家がこの絵を誇りにし、あえて故郷フランシュ=コンテに自分を置いたと記す。本作は、2024〜2025年にオルナンのクールベ美術館の展覧会「クールベになる」に、2026年にはプティ・パレの展覧会「芸術家の顔」に出品された。