《エジプト逃避途上の休息》
- 作者
- カラヴァッジョ
- 制作年
- 1597年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 135.5 × 166.5 cm
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- バロック
黒い翼の天使が背を向けてヴァイオリンを弾き、老いたヨセフがその楽譜を両手で支える。右では、茂る草木に囲まれて、聖母が幼子を抱いたまま首を傾けて眠っている。
概要
《エジプト逃避途上の休息》は、イタリアの画家カラヴァッジョが1597年頃に描いた油彩画で、ローマのドーリア・パンフィーリ美術館が所蔵する。館の記録では、カンヴァスに描かれ、縦135.5センチ、横166.5センチ。所蔵番号はFC 241。館は本作を、ローマに来て間もない若いカラヴァッジョの、際立った美しさと伝える力をもつ傑作とし、画家の宗教画としても大きな画面の絵としても、知られる最初の作品だとしている。
画面の読み解き
館の解説によれば、構図は、ツバメのような大きな黒い翼をもち、背を向けてヴァイオリンを弾く美しい天使の姿によって、まったく独創的なやり方で二つに分けられている。右には、生い茂る草木に囲まれて、幼子を腕に抱いたまま眠る聖母がいる。聖母子は理想化されて描かれ、その美しい顔立ちは、写実的に描かれたヨセフと対照をなす。ヨセフは疲れ果てながらも天使の出現に心を奪われ、楽譜を支えている。画面では、ヨセフの背後に驢馬の顔がのぞき、左下には荷物の包みと編んだ瓶が置かれている。
技法・様式
館によれば、本作は、明るく金色を帯びた色調と牧歌的な雰囲気に、まだロンバルディアとヴェネツィアの絵画の影響がはっきり見える。聖母は、おそらく少し後に描かれた同じ館の《悔悛するマグダラのマリア》と同じモデルをもとにしているようである。館の英語の解説は、《悔悛するマグダラのマリア》と同じく本作でも、画家が静物画の腕前を示しているとする。2010年の展覧会の告知で、館の運営会社は本作を、カラヴァッジョの作品のなかで唯一まとまった風景を含む絵とし、近年の科学的な調査で明らかになった制作の段階から、はじめは風景画として構想されたとも考えられると紹介した。
来歴
館によれば、本作はヴィットリーチェ家の旧蔵品で、1650年に《悔悛するマグダラのマリア》などとともにオリンピア・マイダルキーニ・パンフィーリが購入し、すぐにパンフィーリ家の世襲財産の収集に加えられた。2010年の告知によれば、本作はかつてローマのベル・レスピーロ荘(パンフィーリ荘)に置かれていた。
意義
館によれば、ヨセフが支える楽譜の音符は、フランドルの作曲家ノエル・ボールドウェインが1519年に、『雅歌』から採った聖母にささげる歌詞に付けたモテットを写したものである。館は本作を、同じ館の《悔悛するマグダラのマリア》とともにカラヴァッジョの「傑作」として紹介し、半身像の小さな絵から出発した画家が手がけた、初めての大きな宗教画と位置づけている。