《アルジャントゥイユのレガッタ》
灰青色の空の下、セーヌ川の左手に白い帆のヨットが並ぶ。右の岸には赤い屋根の家と緑の木々が見え、水面には帆や家や木々の影が、太く短い色の筆触となって揺れている。
概要
《アルジャントゥイユのレガッタ》は、フランスの画家クロード・モネが1872年頃に描いた油彩画で、パリのオルセー美術館が所蔵する。縦48センチ、横75.3センチの小さなキャンバスで、右下に「Claude Monet」と署名がある。所蔵館によれば、モネは1871年12月から1878年までパリ近郊のアルジャントゥイユに住んで制作し、この時期に描いたおよそ170点の半分が、セーヌ川の岸辺を主題としている。
画面の読み解き
所蔵館によれば、イル=ド=フランス地方では1830年頃から舟遊びが流行し、アルジャントゥイユでは1850年からヨットレースが開かれた。セーヌ川がここで大きく広がり、パリ周辺でもっとも広い水面をつくっていたからである。鉄道でパリと結ばれたこの町には多くの出場者が集まり、日曜日には川辺を散歩しながらレースを見物する人々でにぎわった。画面では白い帆のヨットが並び、水面には帆や岸の家、木々の影が色の帯となって揺れている。
技法・様式
所蔵館によれば、本作は印象派が正式に誕生する2年前に描かれながら、そのすべての特徴を備えている。とりわけ有名な、筆触を分けて置く描き方(筆触分割)が見られる。チューブ入りの絵具と持ち運べる画架によって、画家はアトリエを出て自然の光の中で描けるようになった。本作も戸外制作によるもので、モネは空気と水の流れと、それが光によって移ろうさまをとらえようとした。
来歴
所蔵館によれば、画家で収集家のギュスターヴ・カイユボットが1876年2月26日にモネから200フランで買った。カイユボットの遺贈により1896年に国が受け入れ、リュクサンブール美術館に入った。その後ルーヴル美術館、ジュ・ド・ポーム館を経て、1986年にオルセー美術館に移された。現在は同館の最上階の第30室に展示されている。2026年2月から5月には、アーティゾン美術館(東京)とオルセー美術館などが開いたモネ展に出品された。
意義
所蔵館は、モネが自分の試みを「とらえがたいものを描きたい。色を連れて逃げていくこの光は、なんともおそろしい」と語ったことを紹介している。所蔵館によれば、本作はこれまでに1917年のバルセロナから2026〜27年のオルセー美術館まで、31の展覧会に出品されてきた。