《チェスをする画家の姉妹の肖像》
樫の木と山並みを背に、豪華な衣装の姉妹がチェス盤を囲む。左の姉が駒を手にこちらを見て、右の妹は手を上げて応じ、末の妹がほほえむ。右端には質素な身なりの年配の女性がのぞく。
概要
《チェスをする画家の姉妹の肖像》は、クレモナ出身の画家ソフォニスバ・アングイッソラが1555年に描いた肖像画で、ポズナン国立美術館に収められている。館の記録では縦72センチ、横97センチのキャンバスに、油絵具とテンペラで描かれている。館の題は《チェスの勝負》。ポズナン国立美術館に付属するラチンスキ財団の所有である。館は本作を、館のコレクションにとどまらず世界的にもきわめて特別な作品とし、ヨーロッパの名だたる美術館の展覧会にたびたび出品されてきたと述べる。
画面の読み解き
館の解説によれば、年齢の異なる四人の女性は、子ども時代、青年期、壮年期、老年期という人生の段階の寓意を思わせる。背景は山の多い風景で、くっきりと描かれた樫の木が立つ。樫は長寿と強さ(雷に打たれても生き延びる)で古くからたたえられ、名家の存続の象徴だった。画家の父は没落した貴族で、自らの家を名家と認めさせることを望んでいた。チェス盤の縁には、ラテン語で「アミルカーレの娘、未婚のソフォニスバ・アングイッソラが、三人の妹と家の女性を写生して1555年に描いた」という銘がある。末の妹エウローパ、中の妹ミネルヴァ、上の妹ルチアの豪華な衣装と家伝の宝飾は、乳母とみられる女性の質素な身なりと対照をなす。この女性は画家の絵にたびたび現れ、画家が家族の肖像にどうしても加えたかったことが、窮屈な描き込み方からうかがえる。
技法・様式
館によれば、ポズナンの修復家によるX線写真と画布の層の調査から、構図の当初の構想が変更されたことが分かっている。左の暗い木のあたりには頭巾をかぶった女性の輪郭が描かれて塗りつぶされ、今見える女性は、すでに描き終えた風景の上にあとから描き加えられた。
来歴
館によれば、1556年、画家の生家でこの絵を見たジョルジョ・ヴァザーリは、ソフォニスバが当代のどの女性よりも熱心に芸術に打ち込み、写生や模写だけでなく独自に美しい絵を描けると書いた。そして、彼女の父の家で見た、チェスをする三人の妹と年老いた乳母の肖像は、きわめて入念に似せて描かれ、生きているようで言葉だけが足りない、と記している。本作はのちにリュシアン・ボナパルトらの手を経て、1823年にベルリンでアタナズィ・ラチンスキが購入した。
意義
館によれば、本作の特別さは完成度の高さだけでなく、今日まで知られる数少ない近世の大女性画家の一人の手になることにもある。画家は生前に大きな成功を収めたが、没後は長く忘れられ、署名のない作品はほかの画家の作とされていた。